くらし 男女共同参画コラム

■連載169
▽仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝

北海道でも桜を見る季節となりました。ゴールデンウィークも楽しみですね。とりわけ新社会人にとっては緊張の1ヶ月を経て、疲労回復と気分転換の余暇になるでしょうか。
さて、私事で恐縮ですが、最近、稚内市の某建設会社の年次大会で講演させていただきました。「管理職・経営職の若手社員に対する接し方」が、講演テーマの一つでした。人手不足の中にあって、ようやく採用した人材の定着率を高めること、言い換えれば離職率を抑制することを考える内容でした。あらためて今回、そのお話をさせていただきます。
世代間ギャップを感じる事項としては、Job総研の調査(20~59歳の就業する社会人男女498人)によれば、何よりも「仕事に対する考え方」が圧倒的に高く、95.9パーセントでした。世代間の仕事観ギャップを理解して埋めるための方法としては、「自分の価値観が当たり前だと思わない」(58.8パーセント)、「世代を超えてコミュニケーションを多くとる」(50.0パーセント)が必要であると認識されているようです(「2022年世代間ギャップ調査」(2023年4月))。
もちろん仕事のスキルとノウハウを蓄積して活用していく上では、経験値が必要です。しかしながら、多様な価値観を認めて柔軟に受け止めるためには、謙虚さと素直さが求められます。管理職・経営職は、何よりも虚心坦懐に若手社員の声に耳を傾けることです。「なるほどなあ。そういう考え方もあるんだね」「それも、まあ一理あるな」などと、共感しつつ話を遮らずに最後まで親身になって聞いてあげることが大切です。
仲間内のコミュニケーションには慣れているものの、年長者とのコミュニケーションを苦手とする新人さんは少なくありません。ここは、年長者である上司・先輩の力量が問われます。気さくに話したいところでしょうが、言動には細心の注意を払わなければなりません。ハラスメントに関する意識としては、「言葉選びが難しい」が52.1パーセントで、圧倒的に首位でした。そして、「異性と話しにくい」28.9パーセント、「気軽に食事や飲み会に誘うことは出来ない」24.6パーセントと続きました(Job総研「2024年価値観変化の実態調査」(2024年12月))。
言うまでもなく快か不快かを決めるのは、あくまで言動を受けている者です。不快に受け取られない言い方や表現を心がけるためには、言い換えるだけの語彙力と表現力を身に付けなければなりません。たとえば、「全く駄目だなあ。研修で教えただろう。頭が悪いなあ」ではなく、「研修で勉強したと思うけれど、どこができなかったか、落ち着いて振り返ってみようか」とか。「おかしいだろう。本当に今まで何をやってきたんだ」ではなく、「どこに原因があるか、遡って探ってみたら。そして、同じ失敗をしないように一緒に考えてみようか」とか。耐性の弱い新人さんには、「北風」よりも「太陽」だと思います。
助言や指導は相手に届いて、改善効果が出ないと無意味です。コミュニケーションをとる際に、どんな情報に基づいて印象が決定されるのか。やはりメラビアンの法則を意識することは必要ではないでしょうか。視覚情報(態度、表情、視線)55パーセント、聴覚情報(声の質、声の大きさ、口調)38パーセント、言語情報(言葉の意味、会話内容)7パーセントでした。ちなみに私は、「威張るな、怒鳴るな、恩に着せるな」を肝に銘じています。

▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。