- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道浦幌町
- 広報紙名 : 広報URAHORO 令和7年6月号
■連載170
▽仕事について考える
稚内大谷高等学校校長 平岡祥孝
晩春から初夏へと、いよいよ爽やかな季節を迎える時期となりました。緑の大地で様々な花に囲まれながら、新鮮な感覚で屋外での心地良さを楽しむことができますね。
ところで、日本の管理職に占める女性の管理職の割合が諸外国と比較して低いことは、以前から指摘されてきました。管理職(課長職以上)に占める女性の割合は12・7パーセントでした(総務省「2023年度雇用均等基本調査」2024年)。男女雇用機会均等法が施行以来、牛歩の歩みの如くと言われながらも、少しずつ女性の雇用環境は改善されてきました。期待を背負って2016年に施行された女性活躍推進法は、企業に女性管理職の数値目標の設定を求めていました。けれども、現実は期待値をかなり下回っていると、私は受け止めています。
日本経済新聞が今年1月に実施したアンケート調査(20~60歳代男女1082人から回答)では、昇進の機会について「男女平等が確保されている」と答えた割合は、男性41パーセントに対して女性は26パーセントでした。「職場で重要な職務を割り当てられる機会は平等だ」と答えた割合は、男性41パーセントに対して女性は24パーセントであり、「リーダーシップを取る機会は平等だと考える」割合も、男性40パーセントに対して女性は26パーセントでした(「日本経済新聞」2025年3月31日付記事)。もちろん本来的には、職場は男女平等であるべきでしょう。けれども、男性と女性では認識差が大きい。それは、男性優位職場が依然として多いことの裏返しとも言えます。
定年研究所等が大企業に勤める45歳以上の女性を対象にしたインターネット調査(「中高年女性会社員の管理志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」)によれば、64・3パーセントの人が管理職には「就きたくない」と回答し、その最多理由としては、「責任が重くなったり、業務負荷が大きくなったりする」ことであり、69・3パーセントでした(「朝日新聞」2025年4月27日付記事)。あくまでも私見ながら、ましてや地域産業を支える地元中小企業では、女性管理職志向はさらに弱まると、私は推察しています。
地元企業において男性優位の職場が変われない要因として、社歴の長い女性社員・職員の絶対数が男性に比べて少なかったことが挙げられるでしょう。結婚、妊娠・出産などの本人事情、あるいは配偶者の転勤、親の介護などの家庭事情や家族事情が理由となって、女性が退職する場合が多かったことは事実だと思います。
それゆえ、女性を管理職に登用したいと考えても、対象者が極めて少ないか、ほぼ皆無といった職場では、男性優位が自然と出来上がってしまうでしょう。また、人間関係や業務などの問題で女性社員・職員の消極的退職者を見てきた中高年男性上司ならば、内心「やっぱり女は無理だな」などと、極めて狭い経験から女性活躍に否定的な眼を向けてしまうこともあるでしょう。とりわけ中高年男性の意識の中に、いわゆる「統計的偏見」と「経験的偏見」が残存していると言っても過言ではないでしょう。
経営環境が変わっていく中にあって、企業も若手女性社員の管理職登用を前提にして、「育てる経営」の実践が求められます。仕事の手ごたえを実感する「働き甲斐改革」と、定着率を高める「働き方改革」の両者を推進していくことが、喫緊の課題です。
▽ひらおか・よしゆき
元札幌大谷大学社会学部教授。英国の酪農経営ならびに牛乳・乳製品の流通や消費を研究分野としている。高校生・大学生の就職支援やインターンシップ事業に携わってきた経験から、男女共同参画、ワーク・ライフ・バランス、仕事論、生涯教育などのテーマを中心に、講演やメディアでも活躍。