- 発行日 :
- 自治体名 : 岩手県洋野町
- 広報紙名 : 広報ひろの 2025年12月号
■同志会のあゆみ
清水さんが話していた「同志会」とは、どのような団体なのか、下谷地清(きよし)さん(初代会長)をはじめ、堤内武人(たけと)さん(4代目会長)、塩倉康美(やすみ)さん(5代目会長)の3人に話を聞きました。
○同じ志の仲間が集う
「県内でも酪農の先進地だった葛巻町での共進会(乳牛の品評会)を見に行き、刺激を受けたことが設立のきっかけ」と語る下谷地さん。塩倉さんは「昔、酪農をやっている家庭は、父親が出稼ぎに行き、その両親と妻や子どもが地元で酪農を営み生計を立てるケースが多く、みんなで勉強して良い牛を生産し、酪農のみで生活していけるような牧場経営をできるようにといった思いがあって仲間が集ったのでは」と振り返りました。
1973年に同志会の前身となる「大野ホルスタイン改良同志会」が立ち上げられ、大野地区の酪農家が10人ほど入会。大野でも共進会を行うことで、明確な目標を持つきっかけや、会員同士の交流、技術研さんの場をつくってきました。90年代後半には久慈市や旧山形村の同志会と合併を重ね、今の「陸中ホルスタイン改良同志会」となり、多い時には約50人の会員がいました。現在は24人と会員は減少しましたが、ここまでの道のりにおいて歴代会長をはじめ会員が、その時代に応じた取り組みを行ってきました。
○より良い乳用牛を
共進会への出品状況をみると、2010年までは町から4頭が県代表牛に選出されてきましたが、前回大会の2015年は県代表牛への選出はかないませんでした。全日本ホルスタイン共進会への出場は、さらなる乳牛の資質向上や、全国レベルの酪農家との技術研さんにつながります。
同志会からの要望もあり、町も酪農家が自分たちの地域でより良い乳用牛を生産をできるよう「受精卵移殖活用促進事業」や、その中でもさらに高能力の受精卵移植をサポートする補助事業を展開して、産地の競争力強化に向けて取り組みました。単純に高能力な牛の受精卵を移植すれば結果につながるわけではなく、同じ親牛を持つ子牛でも、人間の兄弟と同じで特性や育ち方などは異なってきます。また、能力の高い牛ほど、その能力を引き出すための育て方が難しいため、飼料の管理方法や地域に合った育成技術などを学ぼうと会員で集まり勉強会を開催しました。このような努力を重ねた結果、地域の乳牛改良のレベルが向上し、今回の結果にもつながりました。
○「人」が変われば「べご」が変わる
時代の移り変わりとともに酪農から離れる人が増えてくる中、同志会は競争だけでは人は減ってしまうと考え、より「人」を大事に、仲間づくりに力を入れてきました。
「人が変わればべごが変わる。べごが変われば経営が変わる」と話す堤内さん。自身が同志会の会長だった時に、共進会での「ジュニアandレディースショー」を再開しました。当時の酪農は家族経営が主流で、牧場の代表だけでなく、その家族も活躍する部門をつくることで、共進会がにぎわうきっかけになると同時に、子どもが間近で「酪農のかっこいい瞬間」を目にすることで、後継者育成にも貢献しています。
人を大事にしてきた同志会。仲間意識も強くなり、互いに目をかけ、自分の牛だけではなく互いに手伝い、手をかけ合う協力的な雰囲気が根付きました。情熱を持った仲間や、その後継者が切磋琢磨し、仲間に良いことがあったら、みんなで喜び合う。そんな関係性を積み上げてきたからこそ、今回の日本一に結び付いたのではないでしょうか。
酪農においても「後継者不足」という大きな課題があります
暑い日も、寒い日も、毎日大事な牛と向き合う
大変だけどやりがいのある仕事
そんな魅力に触れて、同世代の頼りになる仲間たちとともに
地域の酪農を受け継ぎ
さらに引っ張っていける
若い世代の担い手たちがいます
笑い合いながら、相談し合いながら、認め合い、支え合える
そんなかけがえのない仲間たちとこれからの地域の酪農を、未来を、明るく照らしてくれることでしょう
(特集おわり)
・塩倉滉人(ひろと)(下高森・塩倉健一牧場)
町の酪農を盛り上げられるように、日々頑張っておいしい牛乳を生産していきたい
・大芦和生(かずき)(久慈市・大芦牧場)
今回の大会に同行して、とても刺激を受けた。自分の牧場でも全国の舞台に立てるような牛を作りたい
・清水利月(りつき)(上帯島・清水牧場)
あそこの牧場で働いてみたいと言われるような牧場をつくって、酪農を通じて地域を盛り上げていきたい
・外谷友洋(ともひろ)(久慈市・外谷牧場)
同志会には同世代が多くいるので、切磋琢磨して明るい酪農の未来に向けて頑張りたい
・荒川春風(はるか)(上帯島・清水牧場)
お世話をしている牛の体調に気をつけて、健康でいられるようにケアをしていきたい
