- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県仙台市
- 広報紙名 : 仙台市政だより 2025年11月号
東日本大震災を語り継ぐため市民図書館に設けた「3・11震災文庫」。所蔵する約1万冊から、よりすぐりの本をご紹介します。
◆体験談が伝える命の尊さ、愛(いと)おしさ
行政書士・カウンセラー 樋口 千恵
◇「魂でもいいから、そばにいて3・11後の霊体験を聞く」
奥野修司/著 新潮社 刊
震災の被災地で「故人の壊れた携帯からメールが届いた」などの、被災者の体験を丹念に拾い集めたドキュメンタリーです。一見、不思議な話ばかりですが、体験した方々にとっては紛れもない「事実」です。読み進めるにつれて、理不尽な出来事によって絶望の淵に立たされた方々にとっては、科学的根拠に基づく議論などよりも、どのような形であろうと愛する人と「つながっている」感覚を持てることが心の救いになる、ということを実感します。
大災害の体験譚(たん)は、震災とその後の過酷な現実の中で、生者と死者が此岸(しがん)と彼岸を行きつ戻りつしながら、手探りで道を探していく再生の物語でもあります。
◇「遺体―震災、津波の果てに」
石井光太/著 新潮社 刊
東日本大震災直後、急きょ、安置所とされた岩手県釜石市の中学校の体育館で、遺体の捜索・受け入れや身元確認、遺族への引き渡しのため奮闘した職員や医師、住民の方々を取材したルポルタージュです。
内容は生々しく、読むのがつらくなるほどですが、自らも被災し、肉体的・精神的な限界に直面する中、膨大な犠牲者のご遺体の尊厳を守りつつ、なんとかご遺族に帰したいという、尊く強靱(きょうじん)な思いが、凄惨(せいさん)な状況を支えています。
過酷な現実が押し寄せる中で、登場する方お一人お一人が安置所で奮闘する姿に胸を打たれるとともに、災害の悲惨さと命の尊さを改めて突き付けられる一冊です。
紹介した本は、市民図書館でご覧いただけます
問合せ:市民図書館
【電話】261・1585
