くらし ときめき人~Tome bito~

Profile:

「受賞の連絡を受けた時、『信じられない!』と驚いたものの、電話を切った途端には飛び上がって喜んだのよ」と笑顔を見せた。石川さんは5月2日から8日まで仙台市で開催された「第86回河北美術展」において、応募があった616点の中から、洋画の部最高賞の「河北賞」を受賞した。
油絵を始めたのは5年前。絵画教室に入会していた孫が部活動で参加できなくなり、代わりに自分が描いてみようと通い始めたことがきっかけ。「退職後は新しいことに挑戦したいと思っていたので、チャンスに飛び乗った感じ」と振り返る。
普段は家事の合間に少しずつ自宅で描いているため、葉っぱ1枚だけ描いて家事に戻ることもあり、一つの作品を完成させるまでには時間がかかるという。作品の題材は、自分の心に強く響いたものを選ぶことが多い。今回描いた「火伏せの神々、現る」は、子どもの頃から見てきた伝統行事「米川の水かぶり」の神聖さを多くの人に知ってもらいたいという思いから生まれた。行事当日、現場の空気を感じて光景を目に焼き付け、行事の後にも何度もお寺に行き、門の細かい部分までこだわった。人物の手や水の動きは、夫と孫の協力のもと、自宅の庭で実際に水をかける動作をしてもらい納得するまで絵の具を重ねた。その結果、力強さ、思い切りの良さが審査員から評価された。
「絵を描くのは好きなことだから、気の向くままにゆっくりと同じペースで続けていきたい」と石川さんは穏やかな笑顔でキャンバスに向かう。