- 発行日 :
- 自治体名 : 山形県山形市
- 広報紙名 : 広報やまがた 令和8年1月号
▼高付加価値観光という新しい視点
私が今、注力したいと考えているのが「高付加価値観光」です。単なる観光にとどまらず、教養的な要素を含んだ山形市独自の質の高い体験を提供していきたいと考えています。
海外の富裕層、特に経営者は、旅先でも常に学びを求めています。彼らは山形市に根差した歴史あるものと、継続することの知恵に価値を感じてくれるでしょう。
例えば山形県は、京都府に次いで老舗企業の割合が高いというデータがあります※2。実際、市内においても100年、200年、300年と続く企業が数多く存在します。なぜこれほど長く続くのか。その秘訣(ひけつ)には、経営者の方々が求める学びのヒントが詰まっています。
他にも、山寺には千年以上消えることなくともり続ける「不滅の法灯」がありますし、平安後期から続く山形鋳物などの伝統工芸があります。山形市に根付く「続ける」ことの価値をストーリーとともに深く伝えていく。それが山形市ならではの観光体験になるはずです。
食においても同様です。蔵王かぼちゃ、赤根ほうれん草、悪戸芋など、山形市には種を大切に守り、育ててきた伝統野菜が数多くあります。ただおいしい料理を出すのではなく、その背景にある自然環境や、種を守り続けてきた人々の歴史まで含めて語る。このような奥行きのある体験こそが、私が目指す高付加価値観光の神髄です。
▼持続可能な観光都市を目指して
山形市が観光地としての魅力を高めていくためには、行政だけでなく、民間や地域との連携も欠かせません。山形市では、山形県内初の観光地域づくり法人「おもてなし山形」や村山地域の七市七町※3から成る「DMOさくらんぼ山形」、そして県とも緊密に連携しながら、観光コンテンツの開発を進めています。地域の観光資源を商品化し、訪れる方々に楽しんでいただき、しっかりと消費していただく。そうした一連の流れを周辺自治体や関係機関と協力しながらつくり上げていくことが、持続可能な観光地づくりの基盤になると考えています。
オーバーツーリズムへの対応についても、改善を続けています。蔵王ロープウェイの混雑問題については、事前予約システムの導入やそり専用スペースの造成、空き家を活用した飲食店などの受け入れ環境の整備を通して、改善が進んでいます。
山形市は京都や大阪といった大規模観光都市とは異なり、大量の観光客が一度に押し寄せると、十分に対応できない面があります。だからこそ、ターゲットを明確にした高付加価値観光に力を入れたいと考えています。現在、宿泊税の導入も検討しています。こうした財源も活用しながら、観光客の受け入れ環境を整備し、持続可能な観光都市づくりを進めていきます。
▼観光と暮らしをつなぐ
山形市が持続可能なまちであり続けるためには、経済の活性化が必要不可欠です。その中で、観光は非常に大きな伸びしろを持っています。しっかりと観光客を受け入れ、消費していただき、税収を上げ、それを市民の皆さんに還元していく。そうしたサイクルをつくっていきたいと考えています。
そして、観光客にとって魅力あるまちは、市民にとっても魅力あるまちです。観光客が増えれば公共交通機関の利用が増え、電車やバスの本数が増えるかもしれません。それは市民の皆さんにとってもプラスです。観光と暮らしは別々にあるのではなく、観光が発展することで経済が活性化し、市民生活も豊かになる。そうした好循環を生み出していきたいのです。
山形市の魅力を世界中の人が求め、訪れてくださることは、私たちにとって大変誇らしいことです。市民の皆さんと一緒に、観光都市・山形の実現に向けて、これからも全力で取り組んでまいります。
[取材・文/山形市副業型地域活性化企業人:佐藤優奈]
※2:帝国データバンク「山形県『老舗企業』分析調査(2024年)」より
※3:山形市・寒河江市・上山市・村山市・天童市・東根市・尾花沢市・山辺町・中山町・河北町・西川町・朝日町・大江町・大石田町
《山形市が目指す高付加価値観光》
〇従来の観光
見る/食べる/体験する=表層的な楽しみ方
↓
〇高付加価値観光
知る/学ぶ/触れる=従来の観光を奥行きのある体験へ昇華する
〈知る〉
文化遺産や在来野菜など
山形市の観光資源の歴史背景など
〈学ぶ〉
老舗企業に根付く
伝統継承のノウハウなど
〈触れる〉
山形市の魅力をつなぐ
市民との交流
