くらし めぐみをつなぐバトン(1)

「伝統」が大地を守り育み、
その大地に「希望の種」が蒔かれ、
新たな「生命」が息吹きます。
生産者たちが「愛情と情熱」を注ぎ、
持続と挑戦が「ひと」を育て、
豊かに実る「いわきのめぐみ」。
このめぐみをつなぐバトンがあります。

農業、そして水産業は、古来より人間の営みとともにある生命の源をつくる仕事です。我が国における食文化と国土を支える重要な産業であり、本市では約3,500人が従事しています。
高齢化、担い手不足、気候変動など、簡単ではない課題が数多く存在しますが、それでも日々、田畑や海に出て、自然と向き合いながら、農水産物を育て、収穫し、私たちの「生命」を育んでくれています。
これらの食には、おいしさはもちろん、安全性に愚直に、そして真摯に向き合ってきた歴史があります。
いわきだけが持つさまざまな「めぐみ」。本特集では、このめぐみをいくつもつないできたバトンについて、その魅力と挑戦を紹介します。

■第一のバトン 人のめぐみ 生産者
◆生命を育む「誇り」
農業や漁業を営む方にとって、自然は単なる環境ではなく、生命の源です。春夏秋冬、日々変わる気候に合わせながら、大地や海と向き合い、一粒の種から「生命」を育みます。
一つ一つの作業に手間と時間を惜しまず、愛情と情熱を「生命」に注ぎこむ生産者たち。そのたゆまない努力こそが、生産者という「人のめぐみ」です。
どんなに素晴らしい自然環境に恵まれていても、そこに生産者がいなければ、私たちのもとに食が届くことはありません。
また、生産者に「誇り」がなければ、安全で質の高い食が届くこともありません。
農水産物を育てるのではなく、生命を育むという生産者の誇り。私たちにとっても生命の源であり、日常を彩ってくれる食は、生産者の誇りというバトンから始まります。

◆「想い」という付加価値
生産方法の見直しや栽培品目の拡大など、おいしい食を届けるための「探究心」。
また、ふるさとの土地を守り、人を育て、その地域が紡いできた固有の品種や味などの伝統を後世に残すという「想い」が生産物の品質と価値を高めます。
東日本大震災や台風による農地の浸水、漁業施設等の損壊など、度重なる自然災害は本市の第一次産業に甚大な被害をもたらしました。さらに、原発事故は安全性を信念にしてきた生産者にとって大きな試練となりました。
こうした窮地の中でもバトンを離さずに私たち消費者や次の世代につないできてくれた生産者の皆さん。
生産者の誇りと想いがつなぐバトンは、自然との共生、食の安定供給、伝統文化の継承、そして地域社会の活性化など、私たちだけでなく、地域の未来をも育む大きな役割と使命を果たしています。
「おいしい」という感情は、多くの人の心に残る優しい記憶です。その原点には、生産者というめぐみが必ず存在します。