子育て めぐみをつなぐバトン(2)

■第二のバトン 大地のめぐみ 磐城農業高等学校
◆農業の未来を切り拓く
磐城農業高校は、市内唯一の農業高校です。その学びは多岐にわたり、野菜作り、園芸、畜産、食品加工から土木技術まで特色豊かな4つの学科に分かれています。1つの科には複数の専攻科があり、専門的な知識と実践的な学びを深めていきます。
生徒たちは、米や野菜、肉など、大地から育まれる「めぐみ」について、食の安全性や持続性、命の大切さなどを学び、生産者が守ってきた食のバトンをつないでいます。
2018年には県内高校初のJ-GAP認証を取得しました。この認証は農業生産工程管理の一つで、同校が食の安全や環境保全に真摯に取り組んできた証明です。
生徒たちが運営する「磐農ストア」は、長年続く伝統的な取り組みです。校内で収穫された野菜や卵、手作りジャム等を製造・販売し、その中で経営なども学びます。その活動は地域にも開かれ、多くの人に愛されてきました。
また、地元農家から提案された新規作物の栽培や、企業と連携した商品開発から販売までを行うプロジェクトへの参加など、農業の可能性を広げるための挑戦にも取り組んでいます。
食の基盤産業である農業の重要性は時代を超えて変わることはありません。農業に携わるプロフェッショナルを育成する学校の存在は「大地のめぐみ」を守るとともに、持続的な社会を作るうえでは欠かせません。
生徒たちは、このバトンを将来に、そして私たち消費者に届けるため、しっかりと握り、3年間を駆け抜けていきます。

◇Interview 食の学びを、自身の夢へ生かす
食品流通科 3年 高木 暖さん
食に関わる仕事をしたいと思い、その基本を学べる本校に入学しました。実習が多く、友達と意見を交えながらおいしい食品を作ることが楽しいです。また、自分で育てた野菜はよりおいしく、喜びを感じます。
将来は、管理栄養士を目指しており、大学に進学してさらに学びを深め、学校や病院で活躍したいです。

■第三のバトン 海のめぐみ 小名浜海星高等学校
◆未来の常磐者
大地のめぐみは海を育てます。大地を耕し、土壌を整え、田畑に水や肥料を与えることは、川を通じて海に栄養分や有機物を運び、豊かな漁場を作り出します。
本市の水産業は「常磐もの」としてブランド化され、地域経済の発展や魚食文化の継承という側面でも重要な役割を果たしてきました。
世界に誇れる「常磐もの」というめぐみを後世につなげていくため、未来の「常磐者」育成に不可欠な海洋教育を行う学校が存在します。
小名浜海星高校は、県内唯一の水産・海洋系高等学校であり、その歴史は古く、昭和9(1934)年に県水産試験場併設の講習所として開設されたのが始まりで約90年にわたり海の専門家を輩出してきました。
航海士を目指す海洋科、機関士を目指す海洋工学科、船舶・衛星通信などを学ぶ情報通信科、食品の製造・安全管理などを学ぶ食品システム科など、多岐にわたる専門知識・技術を航海実習などの実践的教育を通して習得していきます。
その中でも缶詰製造実習は、同校の伝統であり、地元小名浜港で水揚げされたマサバ等を教材にし、食品製造や衛生管理などを学びながら「安全でおいしく食卓に届ける」という使命感と責任感を養います。
さらに、部活動においても企業と共同した商品開発を長年行っています。使用する魚種の特徴に合わせて味付けや加工方法を研究し、さまざまな創意工夫を加えながら、魚食文化の普及啓発にも取り組んでいます。
宝の海と呼ばれるいわき沖。この「海のめぐみ」を水産業のさまざまな分野から支える未来の常磐者。このバトンを後世につなげていくため今日も海の学びを深めています。

◇Interview 子どもたちに美味しい地元料理を
食品システム科 2年 菅野 冬馬さん
子ども食堂で食べた料理に感動したことがきっかけで、調理師を目指しています。その夢を叶えるため、食品に関するさまざまな学びはとてもやりがいがあります。将来は、子ども食堂を立ち上げ、地元食材を使用した料理をたくさんの子どもたちに提供したいです。また、本校の特色ある学びを多くの人に知っていただき、水産業に携わる人が増えてくれたら嬉しいです。