文化 須賀川特撮アーカイブセンター5周年・すかがわ特撮塾 5年の歩み、特撮文化を後世へ(1)

須賀川特撮アーカイブセンターは、令和2年11月3日に開館し、令和7年で開館5周年を迎えました。特撮文化を顕彰・推進し、後世に伝えるための取り組みや、すかがわ特撮塾の活動など5年の歩みを紹介します。

◆特撮資料の重要性と保存
特撮は「特殊撮影」の略称で、元々は撮影技術を指す言葉でした。しかし、ウルトラマンやスーパー戦隊、仮面ライダーなどのコンテンツが人気を集めるにつれ、特撮は作品ジャンルを指す言葉としても定着しました。
センターでは、特撮作品を制作するときに必要な道具や、着ぐるみ、ミニチュア、設計図などの「特撮資料」を収蔵しています。特撮資料を保存し、調査・研究を進めることで、特撮作品を制作するための高度な撮影技術やものづくりの職人技、当時の制作状況や裏事情などを後世に残すことができます。こうした技術や知識は、特撮以外の分野でも活用できる可能性があり、特撮資料を公開することで、多くの皆さんにその魅力を知ってもらうことができます。
今後も、特撮資料の新たな活用方法を探ることで「特撮」を世界に誇れる文化として、守り続けていきます。

◆特撮文化の広がり
令和7年11月には、来館者数が13万人を超えるなど、特撮の人気は年々高まっています。開館当初は県内からの来館者が多かったものの、次第に県外、さらには海外からの来館者も増え、特撮が世界でも注目される魅力的な文化であることが感じられます。
近年は、全国放送のテレビ番組で取材を受ける機会が増え、特撮文化やセンターへの関心の高まりが伺えます。

●オリジナルシルエット怪獣スカキング
センター北側の外壁で会えます
必殺技:口からキュウリを丸ごと1本発射し、敵を倒す!
弱点:眠くなりやすく、そのときに攻撃されると大ダメージを負う
特徴:2本の角で困っている人などを見付ける力があり、いつでも助けに来てくれる。キュウリが大好物で、いつか「きうり天王祭」に参加したいと思っている

●センターの歩み
▽令和2年
11月 開館
オリジナルシルエット怪獣の名前が「スカキング」に決定

▽令和3年
11月 来館者数3万人突破

▽令和4年
3月 円谷英二ミュージアム連携事業トークイベント「特撮映像制作の現場から」開催
6月 すかがわ特撮塾第1期初開講
7月 飛行メカの名前が「スカイワッセー」に決定
9月 来館者数5万人突破

▽令和5年
6月 すかがわ特撮塾第2期開講

▽令和6年
6月 すかがわ特撮塾第3期開講
9月 日本テレビ「笑ってコラえて!」でセンターとすかがわ特撮塾の様子が放送される
10月 来館者数10万人突破

▽令和7年
3月 Japan Video Topics(ジャパンビデオトピックス)(外務省サイト)で、すかがわ特撮塾の映像が公開される
5月 Eテレ「ザ・バックヤード 知の迷宮の裏側探訪」で、須賀川特撮アーカイブセンターが放送される
6月 すかがわ特撮塾第4期開講
11月 来館者数13万人突破

◆特撮に魅せられて
開館5周年を記念して、樋口真嗣(ひぐちしんじ)監督と田口清隆(たぐちきよたか)監督のトークショーを行い、島崎淳(しまざきじゅん)さんを司会に迎え、特撮や須賀川特撮アーカイブセンターへの思いを語っていただきました。その一部をご紹介します。

○樋口真嗣監督
映画監督、認定NPO法人アニメ特撮アーカイブ機構副理事長。
高校卒業後に「ゴジラ」の怪獣造形に携わることで映画界に入る。「シン・ゴジラ」で監督と特技監督を務め、庵野秀明(あんのひであき)総監督とともに第40回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞。
主な監督作品:
・巨神兵東京に現わる(2012年)
・シン・ウルトラマン(2022年)
・新幹線大爆破(2025年)

○田口清隆監督
映画監督、すかがわ特撮塾塾長。
自主映画「大怪獣映画G」が認められ、2009年NHKの番組内企画「長髪大怪獣ゲハラ」で商業監督デビュー。「すかがわ特撮塾」では、第1期より塾長を務める。
主な監督作品:
・ウルトラマンオーブ(2016年)
・ウルトラマンZ(2020年)
・ウルトラマンブレーザー(2023年)

○島崎淳さん
特撮ライター、メイキングディレクター、すかがわ特撮塾常任講師。
「温泉シャーク」では特撮コーディネーターとして須賀川市での撮影を誘致。「すかがわ特撮塾」では第1期から常任講師を務める。
携わった主な作品:
・巨神兵東京に現わる(2012年)
・ウルトラマンX(2015年)
・ウルトラマンオーブ(2016年)

―特撮アーカイブセンター開館までの思いは?
樋口監督:生まれ育った時期が、怪獣ブーム真っ盛りでした。当時は雑誌で怪獣が取り上げられ、幼いながらも怪獣の作り方や特撮の仕組みを見ることができました。作り手に興味が沸いたのは、この時かもしれません。しかし、最近の特撮業界は、怪獣の中に人がいることや、怪獣の作り方といった特撮の舞台裏を表に出さなくなってきました。舞台裏を隠してしまうことで、元々特撮を作る側の面白さに惹かれてこの世界に飛び込んだ自分のような人間が、今後いなくなってしまうのではないかという危惧があって。だから、特撮アーカイブセンターを通して「特撮には作る側の人間がいるんだ」ということを子どもたちに知ってもらいたいな、という思いで設立に関わっていました。

―樋口監督が手掛けた「新幹線大爆破」の特撮シーンをながぬまラボ(※)で撮影された感想は?
樋口監督:新幹線の6分の1のミニチュアを制作して使用しました。民家ミニチュアの爆発も撮影しています。
田口監督:昼間準備して夜に撮影する、それもいい形ですよね。
樋口監督:そう。やっぱり前はみんな特撮を東京で撮っていたんですが、東京はオープン(屋外)で撮れる場所がなかったり、掛かる費用も高額になったりするんです。地方でとある特撮撮影を行ったとき、東京でやるよりも都合が良かったことがあり、地方でもできることが分かりました。須賀川市とセンター設立などの関係で関わるようになって、撮影に使えそうな施設を紹介していただいたんです。
田口監督:それが今ながぬまラボって呼ばれている場所で、敷地の一部を舗装するなど須賀川市が誰でも使いやすく整備してくださったので撮影も快適で。駐車場がオープンスペースとして使用できて、A棟という天井高のログハウス調の小屋で撮影の準備もできるんですよね。すかがわ特撮塾でもいつも使っていますが、この前は初めて自分の仕事でも使わせてもらいました。須賀川でならこういう特撮ができるというアイデアをためてあるので、今後も仕事で使いたいですね。

―センター開館5周年を迎えていかがですか?
田口監督:とにかくミニチュアや特撮が好きな人間として、特撮アーカイブセンターがなければ捨てられていたかもしれない物が、いつでも見られる状態にあるのは有り難いことだと思っています。その恩返しの気持ちも込めて、すかがわ特撮塾を一生懸命やらせてもらっています。まずは、須賀川の子どもたちに特撮の面白さを知ってもらいたい。必ずしもそれを仕事にしてもらおうということではなく、特撮を通してみんなで作ることの楽しさを知ったり、苦手の克服につながったりと、子どもたちの成長に貢献できるといいなと思っています。

※ながぬまラボ
地域活動を通して、コミュニティ活動や多様な文化活動の場として利用できる施設(長沼字鹿之内入2-9)