健康 ほっときらり通信

喜多方市地域・家庭医療センター「ほっと☆きらり」
医師 武田仁

■ADHDと脳の成熟
みなさんこんにちは、今回はADHDの話です。ADHD(注意欠如多動症)は発達障害の一種で、注意を持続させることが困難で衝動性が強く、じっとしていること、計画的に行動することが苦手といった特徴があり、学校や家庭、職場など集団活動の場で問題になることがあります。
ADHDの発症には、ドーパミンという脳内の神経伝達物質の働きが深く関わっています。ドーパミンは人間の欲求と行動に最も強く影響する物質と言われ、人間の脳内では「欲求回路」と「制御回路」という2種類のドーパミン回路が働いています。
欲求回路は目標達成のために「動くこと」を促し、とにかく動き、探索し、刺激的なことを見つけ、挑戦させます。これに対し、制御回路は「集中すること」を促し、目標達成のために集中し、粘り強く、計画的に行動するよう働きかけます。ADHDでは制御回路の働きが不十分であり、そのため欲求回路の働きが強く出てしまい、衝動的で集中力を欠き、無計画な行動が目立ってしまいます。
その一方で欲求回路が強いことは、活動的、行動的、新しい刺激を求め挑戦的というよい特性でもあります。アフリカで誕生した人類がさまざまな困難を乗り越えて世界中に広がったのは、欲求回路の強い人が逆境の中でも失敗を恐れずに行動範囲を広げたためとも言われています。制御回路は脳の成長と共に少しずつ発達し、脳が成熟する20歳代前半頃にはADHDも改善することが多いので、それまで周囲がADHDの特性を理解し、寄り添ってサポートすることが大事だと思います。