くらし [特集]動物愛護 今いるここは仮の家(1)
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- 自治体名 : 茨城県水戸市
- 広報紙名 : 広報みと 令和7年6月1日号
ここでは、迷子・遺棄・交通事故などさまざまな事情で収容された犬猫たちとそれを支える人たちが過ごしています。
この場所には、ペットと飼い主という関係ではないけれど、不安や寂しさに寄り添い、そっと包み込む温もりがあります。
手の中で氷が解けていくように、閉ざされた心の扉をゆっくりと開く場所。
そして、新しい家族に出会うまで過ごす場所。
開かれた扉の先にある“本当の家”を見つける“仮の家”
それが、動物愛護センター あにまるっとみと です。
※動物愛護センターでは、令和7年4月1日から「あにまるっとみと」の愛称を使用しています。
動物愛護センターという言葉を耳にして、どのようなことを思い浮かべるでしょうか。飼えなくなった物を収容し、引き取り手がなかったら殺処分する施設というイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。確かに以前はこうした側面がありました。収容スペースの問題などから、すべての動物を世話し続けることは不可能で、一定期間たっても元の飼い主や譲渡先が見つからなければ、殺処分していました。
環境省によると、昭和49年の収容数は、犬猫合わせて約125万頭。そのほとんどの約122万1千頭(97・7%)が殺処分されていました。その後も高い水準が続いていたため、「動物愛護センター=殺処分する施設」というイメージがついたのでしょう。
こうした状況を踏まえ、国では、これまでに動物愛護及び管理に関する法律を4度改正。令和元年の改正では、第一種動物取扱業による適正飼育等の促進や動物の適正飼育のための規制の強化、マイクロチップの装着などのルールを定めることで、動物の命を救う取組を強化していきました。
その結果、収容頭数、殺処分数ともに減少し、令和5年度には、それぞれ約4万5千頭、9千頭(20・2%)となりました。
市では、令和2年4月に中核市となったことをきっかけに、動物愛護センターを開設。動物愛護の拠点として、動物愛護の普及啓発や適正な飼い方の推進、譲渡の推進などの事業を行っています。これらの取組をとおして、人と動物がともに生きていける社会を目指しています。その中でも、特に力を入れているのが譲渡事業です。左記のグラフで示しているのは、センターにおける犬猫の収容と譲渡状況の推移です。令和6年度の状況を見ると、収容数が105頭であるのに対し、譲渡数は72頭となっており、約7割が新しい家族に迎え入れられています(残りは飼い主への返還など)。
センターでは、一頭でも多く譲渡されるよう、混合ワクチンの接種や、ノミやダニの駆除、不妊去勢手術のほか、負傷動物の治療に当たるなど、健康管理に努めています。また、野犬だった犬は、臆病な性格であることが多いため、時間をかけて音や物、人に慣れさせる訓練やしつけを行います。
こうして、新しい家族のもとで暮らせる環境を整え、開設以来、殺処分ゼロを継続しているのです。
・犬猫の収容・譲渡状況
■磯野史子さん DOT MITO ボランティア
たくさんの贈り物を届けてくれる彼らの存在は、日々の喜びや癒しを超えて、私たちの心や人生を豊かにしてくれる。
犬の里親になったことをきっかけに、ボランティア活動を始めた磯野史子さん。「犬って変わるんです。愛情を注いだ分、日に日に表情や仕草が豊かになっていく。私たちの暮らしも変化して心が豊かになっていくんです」。その笑顔からは動物を愛する純粋な気持ちがにじみ出ています。
平成28年に個人ボランティアとして活動を始めた磯野さんは、これまで約200頭の小さな命をつないでいます。
犬の譲渡をメインにしている磯野さんには、長年の活動から培ったネットワークがあります。県内外から犬を飼ってみたいという情報が入ると、センターなどと連携して希望に沿った犬をマッチング。無事に成立した後も、どのように暮らしているか確認し、犬の行く末を見守ります。
譲渡するうえで磯野さんがこだわっているのは、犬の屋内飼育。譲渡希望者には、屋内で飼うことの必要性を説明し、理解してもらえない場合は、お断りするという徹底ぶりです。
▽動物は家族と同じ 少しも違わない
「私たちに幸せを届けてくれる犬と一緒に家の中で暮らすのは普通のこと。例えば、自分のこどもだったら、猛暑の中、外に出しておくなんてしないでしょう。犬だって熱中症にもなるし、辛くても辛いって言えないんだから」と動物の気持ちをくみ取ることが大切だと考えています。
また、地域に住み着いてしまった野良猫に、かわいそうだという気持ちだけで餌を与えてしまうのは、無責任なことだと言います。繁殖してしまえば、不幸な命が増えることになります。このため、その先(捕獲→不妊去勢手術→元の場所に戻す)のことを考えて行動する必要があります。猫が好きでない人、野良猫に困っている人たちにも配慮しながら、人と動物がともに幸せに暮らせる日が来ることを磯野さんは願っています。
今後は、譲渡活動のほか、啓発活動にも力を入れていきたいと話す磯野さん。捨てられてしまう動物を減らすためには、捨てる人を減らさなければなりません。そのため、親子学習会を行ったり、チラシを作って地域に回覧したりして、動物への理解を広めていこうとしています。
「動物を飼う」のではなく、「動物と一緒に暮らしを楽しむ」ことをモットーにしている磯野さんは、動物たちから届けてもらったたくさんの幸せに感謝の気持ちを込めて恩返しの活動を続けます。
■毎月第2土曜日開催!
動物愛護センター親子見学会
時間:10:00~11:00、13:00~14:00
定員:各2組
料金:無料
申込み:開催日の前日(日・月曜日、祝日除く)までに、電話で、動物愛護センター あにまるっとみと【電話】350-3800へ
※8月は夏休み親子見学会を開催します。