- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県潮来市
- 広報紙名 : 広報いたこ 2025年12月号 Vol.297

■水郷の魚たち ―ヨシノボリ(とおりゴロ)
ヨシノボリという魚をご存知でしょうか。令和6年度、文化庁の「伝統の100年フード」に霞ヶ浦・北浦の魚介類食文化が認定され、水郷名産の佃煮が注目されています。そのうちの一つ、「ゴロの佃煮」の材料はゴロと呼ばれる小型ハゼ類で、このゴロのなかにヨシノボリも含まれています。
ヨシノボリの仲間は日本産だけで現在約20種が知られており、日本中に広く分布しています。霞ヶ浦・北浦とその流入河川・水路にはトウヨシノボリ(写真上)が生息しており、とくに流入河川では最もよくみられる魚の一つです。本種のオスは繁殖期の春に色鮮やかになり(尾ビレ基部の橙色斑が名前の由来)、オス同士で口を大きく開けヒレを広げて威嚇し合います(写真下)。本種は生活史のなかで川と湖を回遊します。卵から生まれた3mmほどの仔魚は川を下り、霞ヶ浦・北浦で浮遊生活を経て2cmほどの稚魚になり、梅雨頃に川へ一斉に遡上します。その後は川に滞在して成長し、翌年の春に成熟します。
川へ遡上途中のハゼ類の稚魚を、水郷では「とおりゴロ」と呼びます。地元の方から川にたくさんのゴロが遡上するという話を聞いていて、いつかその光景を見てみたいと思っていた矢先の7月上旬、川での調査時に、体長2cmほどのヨシノボリ稚魚の群れを見つけました。よく見ると、群れは上流のほうまでずっと続く長い列となり、大蛇のようにうねりながら川を登っていました。彼らの回遊生活の一部である「とおりゴロ」現象を実際に見られたあの瞬間は、今でも鮮明に目に焼き付いています。ただ、地元の方によると、昔はもっとたくさんのゴロが遡上していたそうです。ゴロの漁獲量は過去数十年のうちに激減しています。水郷ならではの食文化を残していくためにも、ゴロの遡上・生息しやすい環境の保全・再生が求められます。
茨城大学 大学院理工学研究科
博士前期課程 加藤 樹音
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