- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県行方市
- 広報紙名 : 市報なめがた No.238(令和7年6月号)
対談・鈴木周也市長―高齢化とSDGs
行方市SDGs推進アドバイザー・茨城大学教授 野田真里
■行方市の高い高齢化率と一次産業
野田 鈴木市長とのSDGs対談初年度(令和6年度)では、市長のSDGsに対する思いや、特に重点を置く施策等をお話しいただきました。本年度はこれをふまえて、具体的な地域課題である高齢化について深堀りさせていただければと存じます。
高齢者は『持続可能な開発のための2030アジェンダ』において「脆弱(ぜいじゃく)な人々」とされ、「能力強化」が重視されています(パラグラフ23)。行方市は高齢化率が約38%となっており、全国的にみても高くなっていますが、どのような課題に直面されているのでしょうか。
市長 長寿は素晴らしいことです。その一方で高齢化に伴い、疾病や障害のリスクが高まり、加えて医療費や介護の負担増加も考えられます。本市は幸い、一次産業の就労者の割合が約22%(2020年国勢調査)と比較的高く(全国3.3%、同)、農業従事者の方などは長く就労されています。本市でも他自治体と同じくサラリーマン世帯が増えているため、今後この方々が定年後の人生をどうするか、健康をどう維持するか、フレイル(※1)対策をどうするか等が課題になります。
■健康寿命と農家等
野田 日本は平均寿命が世界最高水準ですが、他方で健康で自立した生活を送れる健康寿命との期間の差(※2)が課題と考えられます。健康寿命の観点からみると、行方市は多くの方が第一次産業に長く就労されることは好ましいと思われますが、いかがでしょうか。
市長 高齢でも元気に一次産業に従事されていることは、健康寿命を延ばす上でよいことです。他方、元気がゆえに「自分の健康は大丈夫」と過信しがちになり、また被雇用者と異なり、定期的に健康診断を受けるかはご自身の判断となるため、疾病等が見つかった時には重症化していた、という事態が懸念されています。こうした方々への健康行動や健康習慣を支援するアプローチがカギになります。
■健康寿命と定年後
野田 次に、会社員や公務員等の被雇用者にとっても、定年後の過ごし方は健康寿命を延ばす上で重要だと思いますが、キーポイントを教えてください。
市長 本市では、定年後もさまざまな形で社会に関わり、ご活躍いただけるような施策を行っています。キーポイントとなるのは「高齢者を地域で孤立させない」ことです。まさに、SDGsの「誰一人取り残さない」精神が重要となります。例えば、中学校等の部活動の地域移行における指導者としてご協力いただく、スクールガードリーダーとして児童生徒の安全確保にご尽力いただく等があります。また(福)社会福祉協議会や(公財)シルバー人材センターと連携した活動も大切です。リタイア後も社会でご活躍いただくことは、フレイル対策、ひいては医療費等の負担軽減にもつながります。
※1 加齢による心身の衰等により、運動・認知機能の低下や疾病で生活機能が障害されること。
※2 男性の場合、平均寿命(81.05歳)―健康寿命(72.57歳)=8.48歳。女性の場合、平均寿命(87.09歳)―健康寿命(75.45歳)=11.64歳(出典:厚生労働省2022)。