- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県志木市
- 広報紙名 : 広報しき 令和8年1月号
朝霞地区医師会会長/滝澤義和(たきざわよしかず)
皆さん、あけましておめでとうございます。今年は干支(えと)が丙午(ひのえうま)です。丙も午も火の性質をもつことから、かつてはこの年に生まれた方は情熱や強い輝き、行動力を持つと信じられていました。「ひょっとして昨年誕生した我が国初の女性首相である高市早苗(たかいちさなえ)さんは丙午?」と思って調べてみたら、私と同じ丑(うし)年でした。
また昨年は、ノーベル賞の日本人ダブル受賞に国内は沸きました。ノーベル生理学・医学賞においては、坂口志文(さかぐちしもん)さんが日本人で6人目の受賞者となりました。免疫反応を抑える「制御性T細胞」の発見は、今後のがん治療やいくつもの自己免疫疾患に臨床応用され、多くの人を救うことが期待されています。すばらしい功績ですね。
さて今回は、最近充実してきた大人のワクチンを話題として取り上げます。日本人の生活様式の変化や医療の進歩などにより、1981年以降、日本人の死因のトップは「悪性新生物(がん)」となっています。2024年の統計によると「肺炎」は第5位ですが、2017年から統計に新設された「誤嚥(ごえん)性肺炎」と、死因第3位の「老衰」の中にも肺炎で亡くなる方が一定数含まれており、これらを合計すると「肺炎」での死亡は「がん」、「心疾患」に次ぐ第3位となり、日本人の死因に大きく関与する重要な疾患であるといえます。
ところで、がん患者と肺炎患者の死亡までの期間はどのくらい違うのでしょうか。正確な統計結果を目にしたことはないですが、がん患者は、おそらく診断後、数か月から数年にわたることが多いと思います。これに対し肺炎患者は、数週間から数か月程度と短く、身辺整理や家族へのお別れの時間も、より限られます。
それでは、肺炎を予防するにはどうしたら良いでしょうか。肺炎で亡くなる方の98%は65歳以上の高齢者です。そうであれば、多くの肺炎の原因となる微生物に対するワクチンを用いるのが有効でしょう。国や地方自治体による公費助成が用意されているのはインフルエンザ、新型コロナウイルス、そして肺炎球菌ワクチンです。ほかにも、インフルエンザと同等の致命率をもつRSウイルスに対するワクチンが2024年1月から接種可能となりました。また、2025年4月から多くの自治体で公費助成が開始された、帯状疱疹ワクチンもありますが、これらワクチンの自己負担額が接種普及を阻む要因になっています。ですが、ここで皆さんに考えていただきたいのです。多くのワクチンは費用対効果に優れています。これは単に医療費だけの話ではありません。数年前のコロナ禍における都市のロックダウンを思い出してください。そこまで大きな話ではなくても、インフルエンザや新型コロナウイルスに感染すれば、職場を数日休まざるを得なくなります。その間、経済活動がストップしてしまうわけですから、本人はもとより、会社にとっても、社会にとっても大きな損失、痛手です。
もちろん、ワクチンには副反応もありますし、費用もそれなりにかかります。しかし仮に肺炎に罹患(りかん)した場合の医療費と、予防接種の費用が同じだった場合、辛い思いをして寝込むよりは、はるかにましだと思いませんか?
また、健康診断やがん検診の受診や、血圧や血糖、脂質のコントロール、禁煙や減酒をすることも、重要な疾病予防行為だと私は考えます。予防にお金をかけることが、結果として費用対効果が高いことを納得いただければありがたいです。ワクチンは子どものためのものであるというのは、過去の話です。皆さんが、生涯を通して予防に力を入れ、健康を維持されることを祈念して、新年のご挨拶の筆を置きます。
問合せ:朝霞地区医師会
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