- 発行日 :
- 自治体名 : 埼玉県三芳町
- 広報紙名 : 広報みよし 令和7年9月号
■れきしとくらし 第四十二回 南止(みなしず)遺跡 その(2)
前号では、南止遺跡の特徴について触れました。今号では、南止遺跡で出土した旧石器時代の遺物について見ていきます。
南止遺跡では、旧石器時代の石器や焼けた石が5千点以上発見されました。その中でも注目される遺物が2つあります。
1つ目は「細石刃(さいせきじん)」と呼ばれる遺物です。細石刃とは、長さが約1センチしかない小さな石器です。この石器は国内外の調査から、動物の角や木の棒で作られた軸の縁に複数個はめ込んで、槍のようにして使っていたと考えられています。細石刃は約1万4千年前から1万3千年前の間に出土する特徴的な石器で、元の大きな石材から小さな剥片を意図的にいくつも作り出す、当時の石器作りの高い技術が伺えます。この技術的な系譜は、北海道・東北地方の分布と、九州から関東地方にかけての分布に大きく分けられ、さらにそれぞれの地域で詳細に分類されています。南止遺跡で発掘された細石刃は、長野県や静岡県の遺跡で指標となった技術を使って製作された石器です。さらに南止遺跡では、この細石刃をその場で作っていた痕跡も残っていました。細石刃を作っていたことが確認された遺跡は町内で南止遺跡だけです。
2つ目は「剥片尖頭器(はくへんせんとうき)」と考えられる遺物です。剥片尖頭器とは、矢印型をした石器で、棒の先端に取り付けて槍のように使用したと考えられるものです。主に九州に分布しており、その起源は朝鮮半島に求められます。剥片尖頭器と思われる遺物は、町内では南止遺跡と新開遺跡でのみ出土しています。
今号で扱った遺物はどちらも、遠方との関わりがあり、当時の人々の交流や技術の伝播が想定される重要な遺物であるといえます。
問合せ:文化財保護課
【電話】258-6655