その他 歴史散歩 第367回

■干支の動物「巳」のはなし
~毛呂山の蛇にまつわる伝承~

令和7年の干支(えと)は「巳(み)」です。巳は十二支の6番目に位置する「蛇」のことです。蛇は毛呂山で今も見かける生き物ですが、昭和初期ごろはもっと身近で、蛇にまつわるさまざまな伝承が残っていました。毛呂山でよく見られた蛇はアオダイショウ、ヤマカガシ、マムシなどで、蛇のことを長虫(ながむし)と呼ぶこともありました。毛呂山に伝わる蛇の伝承をご紹介します。

◇大切にされた蛇
アオダイショウは「先祖のお使い」「家の守り神」と言われ、家に入ったり、茅葺(かやぶき)屋根にいたりしても、大切にしなければならない、また尻尾(しっぽ)の切れた蛇は仏様だから大事にするようにと言われていました。
蛇の抜け殻を財布に入れておくとお金に困らないという伝承もありました。特にヤマカガシの抜け殻はめったに見つからないので珍重されました。蛇はとかく金運と結びつくことが多く、臼(うす)の中に蛇が入っていると家計が楽になると言われたそうです。

◇天気の予兆
蛇は天気の予兆も知らせると言われています。干ばつの時に蛇が堀から上がってくると大洪水があると伝えられていました。

◇蛇を避ける方法・おまじない
蛇は藍(あい)を嫌うため藍染めの布で手足を覆うといった工夫のほか、おまじないを唱えることも多かったようです。おまじないは「南無池鯉鮒(なむちりゅう)(智龍)大明神」といいました。池鯉鮒大明神とは愛知県知立(ちりゅう)市の知立神社のことで、江戸時代から虫(蛇のこと)除けの神社として全国から参詣者(さんけいしゃ)があったそうです。榛名講と蛇毛呂山には年1回、榛立(はるな)名神社(群馬県)に参詣し、嵐除けの御札をいただく榛名講が、戦後まで盛んに行われていました。榛名山の榛名湖には龍神が住むという言い伝えがあり、龍神は蛇神とも考えられています。榛名講は龍(蛇)神の霊験(れいげん)を授かる意味もあったといえるでしょう。
このように蛇は、恐れられながらも大事にされてきた特別な生き物だったといえます。今年は巳年にちなみ蛇に注目してみてはいかがでしょうか。

■榛名神社の養蚕(ようさん)の御札
蚕(かいこ)を食べる鼠(ねずみ)を防ぐため、鼠を食べる蛇・猫・ムカデも養蚕の守護者として祀(まつ)られました。
※詳細は本紙またはPDF版をご覧下さい。