文化 香取遺産(vol.232)

■佐原囃子(ばやし)集成
今を去ること78年前の昭和23年3月、佐原囃子の伝承における金字塔ともいえる『佐原囃子集成』が刊行されました。
それまでは口伝による伝承方法でしたが、新たに数字を用いた楽譜を作成したのです。数字符は、邦楽に精通していた菅井誠太郎さんが考案したもので、横笛の吹き口に近い方から1、2、3とふさぐ指孔を表し、数字一つで二分音符または四分音符を、アンダーラインの数によって八分音符、十六分音符として音の長さを示しています。採譜にあたった岡野全一郎さんは、昭和21年から昭和22年の1年間で各地の下座連を訪ね、50曲以上をノートに記録しています。
編集にあたった小川智道さんは、その「はしがき」に「口伝の常として多大の日時を費やすことも大きな欠点であった。更に普及の点から考えてはもっと大きな難点になって来る。坐臥(ざが)の間にして最奥の秘曲まで独習できるとしたら愛好者にとってどんなにか便利なことであろう。その意味からしてもこの編輯(へんしゅう)には是非(ぜひ)とも心血を傾注しても完成しなければならないと思った。」と刊行に至った思いをつづっています。
『佐原囃子集成』は、岡野さんが所属していた佐原囃子連中によって改訂を重ね、昭和39年に『限定版佐原囃子』が、平成10年には解説編を加えた『佐原囃子集成第三版(楽譜編・別冊解説編)』が刊行されています。
佐原囃子には牧野・玉造・神里と大きく三つの系統があります。これまでの改訂は、牧野系に属する佐原囃子連中の流儀に基づいたものでしたが、平成14年には神里系に属する内野下座連、平成29年には玉造系に属する大戸下座連の楽譜が、また、令和6年には初版の復刻版が有志によって刊行されています。さらに昨年『佐原囃子集成第四版』が刊行されました。戦後、自転車で各地を回った一人の青年の熱い思いは、佐原囃子を志す人々の心に燎原(りょうげん)の火となって広がっています。

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