- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都
- 広報紙名 : 広報東京都 令和7年11月号
無音の世界で繰り広げられる熱気を体感しよう
《予約不要・観戦無料※》
※開閉会式はチケットが必要です。抽選受付は終了しました
◆Special Interview 東京から世界へ 挑戦のストーリー
■デフバレーボール
中田 美緒選手
MIO NAKATA
《Profile》
2001年神奈川県生まれ。サムスン2017デフリンピックで金メダル、大学ではインカレ連覇を果たす。2024年の世界選手権ではベストセッター賞を受賞。世界のデフバレーボール界を代表する存在。
■東京を舞台に2度目の金メダルへ。
●静寂を打ち破る一撃
独特の緊張が張り詰める音のないコート。響くのはシューズの音とボールを打つ音だけ。点が決まった瞬間、歓声が沸き上がる_「その緩急こそがデフバレーボールの魅力の一つ」と中田選手は語ります。
「きこえる、きこえないに関係なく、バレーボールは 1 点をチーム全員で取りにいくスポーツ。歓声が音として届かなくても、会場全体の熱気や一体感は確かに私たちに伝わります」
●試練も、悔しさをバネに
16歳で出場したサムスン2017デフリンピックで金メダルを獲得。今ではチームをけん引する存在ですが、これまで葛藤や試練もありました。
「大学ではきこえる人の強豪チームに入りましたが、耳のきこえない選手は私一人。伝わらない孤独に悩み、監督に相談したところ『自分のことをちゃんとみんなに伝えてみたら?』と。そこで資料を作り、コミュニケーションの方法をチームに説明しました。その後は視線やジェスチャーなどを使って少しずつ連携が取れるように。結果的にチーム全体の視野が広がるなど強みにもつながりました。自ら心を開いて動くことの大切さは、デフバレーにも生きています」2大会連続のメダルを懸けて臨んだ前回大会では、コロナ禍の影響により、準決勝で棄権を余儀なくされることに。「あの時の悔しさを東京の舞台にすべてぶつけたい」
●目指すは、全勝の金メダル
昨年6月、デフリンピックに先駆けて行われた世界選手権で金メダルを獲得した日本代表は、まさに世界を迎え撃つ立場です。
「目標は『全勝優勝!』チーム全員、強い気持ちで臨んでいます。また、多くの人にデフリンピックを知ってほしいとも願っています。『きこえない=しゃべれない、どうコミュニケーションを取ればいい?』と思われがちですが、実際には筆談やジェスチャー、文字起こしなど多彩な方法があります。デフリンピックを通じて、スポーツの素晴らしさとともに、多様なコミュニケーションの世界を知ってもらえるきっかけになれば嬉しいです」
日本初開催のデフリンピックで繰り広げられる静かで熱い戦いが、まもなく始まります。
■デフハンドボール
小林 優太選手
YUTA KOBAYASHI
《Profile》
2001年鳥取県生まれ。日本で初めて結成された男子のデフハンドボールチームを、キャプテンとしてけん引する身長192cmの絶対的エース。
■ゼロから切り拓いた、世界の舞台。
●チーム結成とトライアウト
「筑波技術大学の学生だった2022年、教授からデフリンピックが日本で開かれるとききました。そこでデフハンドボールのサークルを立ち上げたのが始まりです。最初はどうなるか予想もつきませんでしたが、その後、日本ハンドボール協会内にデフ組織が置かれるなど、日本の初出場を見据えた体制が整ってからは早かったですね」
すべての挑戦には“始まり”があります。来たる東京大会でデフリンピックに新たな歴史を刻むのが、男子デフハンドボール日本代表チームです。都が主催したトライアウトで競技適性が高い選手を発掘するなどし、その後、デフリンピックに出場する 16 人が決定。半数以上が競技未経験者という、ゼロからの船出でした。
●きこえの違いという「壁」
「当初は、補聴器をつければきこえる選手と手話言語中心の選手との間に大きな壁がありました。試合中は補聴器を使えないため、コミュニケーションの基本は手話言語。合宿や練習ではもちろん、日常でもSNSで密に連絡を取り合うように心掛けました。こうして2年間、幾多の局面を乗り越えながらチームを築き、絆を深めてきたのです。今ではチームが一つになり、世界の舞台でメダルを目指す覚悟とモチベーションが着実に高まっています」
「空中の格闘技」と称される、スピードとぶつかり合いが特徴のハンドボール。
「基本ルールはきこえる人のハンドボールと変わりませんが、注目してほしいのは視野の広さ。普段から耳の代わりに目を使って情報を集めているので、真横から斜め前まで見える感覚が鍛えられています。音がきこえない中で戦術をどう伝え合って動き、どうディフェンスしていくのか。会場で生の迫力を感じてください」
●デフハンドボールの未来へ
日本のデフハンドボールの歴史が今大会から始まります。
「世界の強豪に胸を借りながら、勝てる試合は必ず取りにいく。僕らの挑戦が日本のデフハンドボールの未来にもつながるからこそ、良いスタートを切る姿をお見せします。応援よろしくお願いします!」
写真提供:(公財)日本ハンドボール協会
※詳細は本紙をご覧ください。
