くらし 【特集】「すぎなみビト」ローカルガイド Andy Miller(アンディ・ミラ)(2)

■散策気分で日常を味わう「Dig東京ツアー」をスタート
─「Dig東京ツアー」を立ち上げたのはなぜですか?
来日後はオーストラリアにいたときと立場が変わり、妻が主に外で仕事をして、私が家事・育児を担うことになりました。自分も仕事をしたいけれど、保育園や習い事の送迎、夕飯の準備などやるべきことがたくさんある。そんな中で柔軟にできる仕事は何か? と考えた際に思い描いたのが、自転車を利用したツアー事業でした。子どもたちの送迎も電動ママチャリでやっていて自転車には馴染みがあったし、それまで多くの国を旅してきて世界のいろいろな人、異なる性格・文化を持つ人たちと出会ってきた経験もある。そんな背景もあり、ガイドの仕事はいいなと思っていたので訪日観光客向けの「Dig東京ツアー」をスタートしました。

─「Dig東京ツアー」の特徴を教えてください。
いわゆる観光地ではなく、私が暮らすエリアを中心に、日本のありのままの姿を感じられる場所を少人数で巡るツアーです。移動は徒歩か自転車。ツアーと言いつつも、「散策」と呼びたい感じ。私自身もツアーガイドというよりは、高円寺の住人の1人として日常を案内している感覚です。

─あくまで日常を案内しようと考えたのはなぜだったのですか?
訪日観光客の多くは短期間で日本を旅行します。そのため都内でも、例えば新宿・渋谷など有名な場所だけを訪ねて終わってしまう。もちろんそういった場所も魅力的ですが、新宿・渋谷=日本という印象になってしまうような気がして。私としてはもっと日本の日常生活を見てほしいなという気持ちがあったので、日常の案内をコンセプトにしました。

─どんな場所を訪れるのですか?参加した方の反応も気になります!
定番は高円寺~阿佐谷~善福寺川付近を巡るコース。自転車をピックアップするとき、自転車が整然と並ぶ駐輪場も海外の皆さんにとっては珍しいようで、「自転車が捕まっているみたい!」という声が度々聞こえます(笑)。自動販売機の温かいドリンクや立ち食いそばなどの日本独自の文化は、海外の皆さんにとっては新鮮な体験に感じられます。他にも道路のちょっとした標識・ゴミの出し方・日本の学校についてなど、通りかかった場所に応じて会話をする中で、さまざまな文化の違いに皆さん驚きます。

─アンディさん自身はこの仕事のどんなところに喜びを感じますか?
「1人では行けないところへ行けた」「普通の1日を過ごせた」などと言ってもらえることが喜びです。観光客だけでは入りづらいローカルな店に立ち寄り、例えばそば屋でタクシー運転手が休憩しているような、そんな何気ない日本の風景を見られることが参加者にとっては嬉しいようです。

■杉並のまちの皆さんと共に行うツアーに挑戦したい
─今後、杉並のまちで挑戦したいことはありますか?
お客さんに充実した時間を提供する「Dig東京ツアー」であると同時に、まちの皆さんにも喜んでもらえるような事業にしたいと思っています。今注目しているのはコミュニティー、まちとのつながり。挑戦したいことは、まちの皆さんと一緒にツアーを行うことです。今はオーストラリア出身の私が外国人の目線で杉並のまちを紹介していますが、もともとこの地域に暮らす人たちが紹介すると、また違う視点もあるのではないかと思うのです。

─異なる文化をルーツに持つ人同士が一緒にまちを作っていく、共生していく。その秘訣をアンディさんは何だと考えますか?
たくさんの人との出会いを通して、文化の違いはあって当たり前、違いを受け入れて互いに努力することが大切だと分かりました。一方で、広い視野で全体を見渡せば、どこの国の人も皆変わらないとも感じます。共生するうえで一番大切なのは笑顔。笑顔でいる姿勢です。それだけで多くのことが解決します。その気持ちを持って、杉並のまちにもっと根ざしていきたいです。

■アンディさんが気になった 杉並のこんな所がinteresting!
◇子どもたちを守る道路に描かれた動物
文字だけでなくイラストでも表現されていて、小さな子どもたちが見ても簡単に理解できる、遊び心のある素敵なアイデアです!

◇狭あい道路整備・拡張後のプレート
緊急車両が通れるよう道路を広げるために協力することは、地域の安全を守るための素晴らしい行動ですね!