文化 青梅市の文化財探訪1 「国宝 赤糸威鎧」

■国宝 赤糸威鎧
市文化財保護指導員 小島みどり

赤糸縅鎧(あかいとおどしのよろい)は、市内御岳山に鎮座する武蔵御嶽神社が所蔵しています。神社では神様の宝として大切に保存してきました。赤糸縅鎧は、「大鎧(おおよろい)」あるいは「式正鎧(しきしょうのよろい)」と言われるもので、平安時代後期に製作されました。
鎧は、革や鉄で作った「小札(こざね)」という板を「威毛(おどしげ)」で繋(つな)いで作られています。威毛を通していく意味から「縅(おどし)」という言葉が使われました。植物の茜で染めた赤い糸で作られている威毛から「赤糸縅」と呼ばれています。
兜(かぶと)は鉄漆(てつうるし)塗りの十七枚張りで、下部に「錣(しころ)」と「吹返(ふきかえし)」と称される首や顔を敵の矢等から守る防具を付けています。
この鎧は、武蔵国府の支配者であった畠山重忠(はたけやましげただ)が奉納したと伝えられています。武士の棟梁(とうりょう)が着用するもので、平安時代の優雅さと武具としての重厚さを兼ね備えた日本を代表する大鎧です。また、その評判は古くから広く知られており、江戸時代には八代将軍吉宗、十代将軍家治が上覧するほどでした。寛政12(1800)年に松平定信が著した「集古十種(しゅうこじっしゅ)」という書物の中にも古器物(こきぶつ)の名品として記載されています。明治32(1899)年8月1日、日本を代表する貴重な文化財として、国宝に指定されました。近年には、展示ケースの新調と鎧の一部修理を行っています。
※現在は保存のために公開を一時的に休止しています。

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