くらし 市長コラム 多摩の風 第136回
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- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都多摩市
- 広報紙名 : たま広報 令和7年9月5日号
■いつ始まり終わったのか
戦後80年の夏も蝉の声と共に過ぎました。ただ、あの戦争は、いつ始まり終わったのか。改めてザワザワする夏でした。
戦争が始まったのは1941年12月8日の真珠湾攻撃から? いや1937年7月7日の盧溝橋事件から? それとも1931年9月18日の満州事変から?
戦争が終わったのは、ポツダム宣言を受諾し、玉音放送を聞いた8月15日? 日本政府が降伏文書に調印した9月2日? 日本が連合国軍の占領下から独立した1952年4月28日?
確かに教科書的には開戦は真珠湾攻撃、終戦は8月15日です。ただ、ご家庭によっては、戦地から肉親が帰って来た日、遺骨を収集した日などそれぞれ異なるのかもしれません。
精神科医で劇作家の胡桃澤伸さんは、先月開催された「多摩市平和展」で「戦後というが、私にとって戦争はまだ終わっていない」と祖父が村長として満蒙開拓団を送り出し、敗戦と敗走の中、その村民たちが満州で集団死した責任をとり、終戦の翌年に自死したとの話をされました。その事実もご自身が37歳の時に知ったそうです。
ソ連の対日参戦によって満州では多くの悲劇が生まれました。しかし、もともと満州国は誰が作ったのでしょう。国策として進められた満蒙開拓の責任は一体誰にあるのでしょう。
もし当時、私が村長だったら中国の人々が住む土地を接収し、「王道楽土」と呼ぶ国策にどこまで抵抗できたのか。背筋が凍る思いです。
(多摩市長 阿部裕行)