文化 都筑区に関する歴史コラム 第18回

◆茅ヶ崎城
横浜市歴史博物館 学芸員 橋口 豊(はしぐちゆたか)
茅ヶ崎城は市営地下鉄センター南駅東側に所在する中世の丘城(おかじろ)です。地元で古くから「じょうやま」と呼ばれたこの地域は、江戸時代の地誌「新編武蔵風土記稿(しんぺんむさしふどきこう)」では平安~鎌倉時代の武士「多田 行綱(ただ ゆきつな)の館跡(やかたあと)」と記載されていました。7回に及ぶ発掘調査の結果、15世紀後半と16世紀前半の2期にわたって築城が進んだ中世城郭であることがわかってきました。
茅ヶ崎城は早渕川の南岸、東西に張り出した舌状台地(ぜつじょうだいち)の東の端に作られました。茅ヶ崎城の内部は6つの郭(くるわ)が並列につながるように配置され、それぞれ空堀(からぼり)や土塁(どるい)で区画されています。
発掘調査によって200点ほどの資料がみつかり、その多くは中央に位置する中郭からの発見でした。中郭からは、かわらけ・常滑(とこなめ)の甕(かめ)・瀬戸の緑釉皿(りょくゆうざら)などの遺物のほかに、時期の異なる複数の建物跡が確認されており、いずれも倉庫であると考えられています。
こうした成果から茅ヶ崎城は、地域の支配拠点というよりも緊急時に立て籠もる地域の避難所としての役割などが想定されています。
現在の茅ヶ崎城は横浜市の史跡に指定され、茅ヶ崎城址公園として整備されて見学することが可能です。

引用・参考文献:阿諏訪青美(あすわはるみ) 2019『図説 都筑の歴史』地域に残る中世城郭「茅ヶ崎城」

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