文化 自然歳時記

■キビタキ(ヒタキ科)
初夏に東南アジアから渡ってくる夏鳥。体長は13.5センチほど。雄は眉班や喉、胸、腰が黄色く気品がある。雌は地味だが美しい。広葉樹林での鳴き声は、心洗われるほど美しい/不動尻で見つけた。

暑い夏だが、木々に囲まれた森を歩くと、うそのように涼しい。
遠くの方から「ピックルルピピロピピロ」という鳴き声が聞こえてきた。耳を澄まして声の方向に双眼鏡を向けると、ケヤキの中ほどの枯れ枝の上に黄色い胸が目立つ雄のキビタキの姿があった。
太陽の光を遮る緑の葉を背景に小さな体で鳴く姿は、日常の疲れを忘れさせてくれる。幾重もの緑の葉が風に揺れ、すがすがしい空気が流れる。片足をそっと胸に納めたキビタキはゆったりとくつろいで見えた。
秋に南へ渡っていく、素晴らしい歌の贈り主の平穏無事を祈った。

写真・文:吉田文雄

※写真は本紙をご覧ください。