文化 歌人?書家?美術史学者?教育者?文人 會津 八一

今号は、新潟市初の名誉市民である會津八一(あいづやいち)と、功績を後世に伝える施設「會津八一記念館」を紹介します。

○文人とは
文学などに精通した学問的教養と詩や文章、書画などの芸術的才能を兼ね備えた知識人のこと。

◆會津 八一ってどんな人?
詳しい人に聞きました
會津八一記念館 学芸員 湯淺(ゆあさ)健次郎さん

▽文人 會津八一
明治から昭和にかけてさまざまな分野で才能を発揮した、新潟市出身の「文人」會津八一は、類いまれな歌人であり、孤高の書家であり、優れた美術史学者であり、教育者でもありました。各分野で作品や功績を残していて、「新潟日報」の題字や老舗菓子店「大阪屋」の看板を書いたことで知られています。八一が詠んだ短歌を石に刻んだ歌碑も各地にあり、県内では県立図書館や県立新潟高校など16カ所、県外にも奈良の法隆寺や東大寺など、30カ所以上に建てられています。

▽「秋艸道人」を名乗る
「八一」という名前は誕生日が8月1日だったことから付けられたといわれています。八一は雅号(がごう)(ペンネーム)を「秋艸道人(しゅうそうどうじん)」としていて、「秋艸(秋の草)」は、8月(暦の上では秋)生まれであることと、草花を育てるのが得意だったことに由来します。「道人」とは学問・芸術の道を探求する人という意味です。

▽地元新潟の文化振興に貢献
新潟出身や縁のある偉人はたくさんいますが、八一は晩年故郷の新潟に帰り、地元の文化振興に貢献した点でも高く評価されています。新潟で講演や展覧会を精力的に行ったり、地元新聞で随筆を書いたりしました。
八一が生活した「秋艸堂」では多くの市民に文化芸術の話を惜しみなく伝え広めたといわれています。こうした功績が評価され、昭和26年3月に新潟市初の名誉市民に選ばれました。

○名誉市民とは
市民や新潟市に関係の深い人物のうち、学術や技芸、文化の進展または新潟市の発展に多大な貢献をし、その功績が顕著で市民から深く尊敬される人に与えられる称号のこと。

◆新潟が生んだ文人 會津八一が残した功績
歌人、書家、美術史学者、教育者など、さまざまな顔を持つ會津八一の歩みと、各分野での功績を紹介します。

▽歌人 會津八一
全て平仮名書きで、万葉調のおおらかな歌いぶりが特徴です。歌の音を大切にし、技巧を凝らした歌でなく自身の感動を素直に詠む歌を好みました。八一の歌は歌人・齋藤茂吉(もきち)なども高く評価しています。

『おほてらの まろき柱(はしら)の 月影(つきかげ)を 土(つち)にふみつつ ものをこそ思(おも)へ』

[解説]
月の光を受けた唐招提寺(とうしょうだいじ)金堂の円柱。その長い影を踏みながら行きつ戻りつ、古い奈良の都を思い、遠い世のギリシャの神殿を思う。古代への憧れを詠んだ八一の代表作。

▽書家 會津八一
左利きだった八一は幼い頃、個性が強く右手で書道の手本通りに書くのが苦手でした。
八一独自の書の形は中国古代文字をはじめとした、さまざまな文字を研究し、一字一字を大切にすることで作り上げられました。

『之(これ)を涵(ひた)すこと海の如(ごと)し
之を養うこと春の如くす』

[解説]
学問や見識を自然に染み込むように養い育てることの重要性を説いた言葉。

▽美術史学者 會津八一
東洋美術史の中でも主に奈良時代の美術などを研究していて、実物と文献資料を車の両輪のように駆使する「実学論」を実践していました。学位論文「法隆寺法起寺法輪寺建立年代の研究」は、従来の美術史の学説と異なる説を唱えたもので、学界に新風を吹き込みました。

▽教育者 會津八一
中学校や大学などで教壇に立った八一は、厳しくも優しい風変わりな先生だったといわれています。受験に挑む学生に向けて人生の指針を示した「学規」四則は、後に自らの座右の銘にもなりました。

「学規」四則
-ふかくのこの生を愛すべし(自分の命を大切にし、愛しなさい)
-かへりみて己を知るべし(自分自身を深く理解し、反省しなさい)
-学芸を以て性を養ふべし(学問と芸術を通じて人間性を磨きなさい)
-日々新面目(しんめんもく)あるべし(毎日新しい自分を創造し続けなさい)

▽會津八一の歩み(年表)

◆開館50周年 會津八一記念館に行こう
当館は昭和50(1975)年に開館しました。約1万2千点の作品資料を所蔵していて、年4回開催する展覧会ごとに作品を入れ替えています。所蔵品が多いので常設の展示はなく、何度来ても毎回異なる作品を見ることができるのが魅力です。
開館50周年を迎えた今年度は、節目の年にふさわしい、魅力ある展覧会を開催しています。この機会にぜひ当館にお越しください。
各種イベント、講演会なども随時開催しているので、ホームページなどをチェックしてください。

▽施設情報
開館時間:10時~18時
※月曜(祝日の場合は翌日)、展示替え期間、12月28日~1月3日は休館
入館料:一般500円、大学生300円、高校生200円、小・中学生100円
※土・日曜、祝日は中学生以下無料。展示内容で異なる場合あり
場所:中央区万代3-1-1 メディアシップ5階
JR新潟駅から徒歩約15分
新潟交通バス停「万代シテイ」下車 徒歩約1分

12/8~12/15は展覧会の準備で休館!!
間違えて来ないように。

▽開館50周年記念展覧会「ベスト・オブ・會津八一」
同館の作品資料の中から、過去の来館者アンケートで人気だった作品や学芸員お薦めの作品、特徴ある作品など、厳選した見応えある作品を展示します。同時開催で、八一の歌を写真で表現するフォトコンテストの入賞作品も展示します。
会期:12月16日(火)~3月22日(日)

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問い合わせ:文化政策課
(【電話】025-226-2563)