健康 加茂養生訓 20 最終回 (老いに至りて楽しみを増す)

加茂病院 富所 隆
長かった夏も過ぎ、朝夕はずいぶんと涼しく感じられるようになってきました。もうすぐ白い便りが見られるようになってくることでしょう。

今日は、老いについてお話しします。貝原益軒は、養生訓の巻末に、老いについて記しています。「いかに老いを過ごすか」は、「いかに人生を締めくくるか」ということであり、私たちにとって、とても大きなテーマです。益軒は、老いては「世事に思い煩うべからず」「怒りなく、うれひなく、過ぎたる人の過ちを、とがむべからず」と諭し、「我が心の楽しみの外、万端、心にさしはさむべからず」と述べています。ここでいう心の楽しみとは、心の中に何の憂いも、こだわりも無く、心底楽しめて、愛しめて、心穏やかにできることを指しています。天地や四季の移ろい、山川の美しい景色、草木の成長の喜び、絵画や音楽に楽しみを見つけることもできるでしょう。例えお金や物に恵まれていなくても、心豊かに過ごすことは、何よりも至福の喜びとなると述べています。

仏陀の言葉にも「幸せは、あなたが持っているものや、あなたが何者であるかによって決まるものではありません。ひとえに、あなたがどう考えるかによって決まるのです」とあります。満ち足りた心を持つ事で、皆さんの老後がますます実り多いものになることを、心から祈念しております。

さて、これまで貝原益軒の「養生訓」をもとに、思いつくままを書かせて頂きました。本誌で20回目となりましたが、故合って今回で加茂養生訓を終講とさせていただきます。

今まで、ご愛読ありがとうございました。