- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県長野市
- 広報紙名 : 広報ながの 2026年2月号
■共にある、暮らしの中で
「何やってるんですか?」と学校に向かう子どもたちから声をかけられた。無理もない。赤いタスキ姿に白い手袋着用で、行き交う人や車に向かって手を振っているのだから。「選挙をやっているんだ。学校でいえば児童会の会長を誰にするか選ぶようなものかな」と私。子どもたちは「ふーん」と一言だけ。その様子を見て、遠い昔の自分を思い起こした。
私が小学生の時、確か低学年だったと思うが、同じようにタスキをかけて手を振っている人を町で見かけて、あの人は何をしているのかと母に聞いた。「児童会の会長を選ぶようなものかな」と母。あの時の私も「ふーん」だったと思う。分かったような、分からないような。
そういえば、あの時、母に聞けずじまいだったことがあった。なぜ選挙に出ている人の名前に「ひらがな」が多いのか、だ。学校には名字が「ひらがな」の友だちはいないから不思議に思っていた。でも、今は、もちろん聞かずとも、その理由はよく分かっている。なぜなら、私の初めての選挙、国政選挙(参議院選挙)に出ることになった際、「萩原」と投票用紙に書かれた票は無効となってしまう恐れがあることが分かった。荻(おぎ)と萩(はぎ)。わずかな違いのようではあるが、それで無効となってはいけないと、届け出の候補者名は「おぎわら健司」に決めた。
名前については、子ども時代にスキー大会でもらった賞状に「萩原健司」と書かれていたことが多かった。荻と萩がよく間違われたのである。私の出身地である群馬県は、萩原姓が特に多い地域であることが影響していたのだと思う。子どもの私にしてみれば荻と萩の違いはあまり気にならなかった。ただ、いつも父が大会本部に名前の修正をお願いしていた。息子の頑張りの証(あかし)である賞状が「萩原健司」では、父にとっては無効だったからだろう。
そんな物思いにふけっていると子どもたちの「がんばってねー」という声が聞こえた。元気の良い励ましに、我に返って「はい、頑張ります」。学校に向けて走り出したその背中に、そう誓った。

