- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県伊那市
- 広報紙名 : 市報いな 令和7年6月号
小路(こうじ)。自分の生活空間の中にもたくさんの小路がある。小さい頃は、いつも通っていた小路なのに、大人になるにつれ通らなくなってしまった小路。
久しぶりにそんな小路を通ってみた。そこには、半世紀余前にタイムスリップした様な空間が広がっている。空き地になってしまっている場所、たたずまいが変わった建物、時の移ろいを感じる。しかし、そこはまさに、自分にとっての原風景の空間であることも確かなこと。
友と語らい、笑い合い、時にはわざと遠回りして歩いた小路。おつかいで、通い帳を懐にして通った小路。そんな店先で、元気よく迎えてくれたおばちゃんの顔。そんな小路は、自分の子どもの頃の記憶を鮮やかによみがえらせてくれる。
周りの景色も、春に芽吹いた若葉がずいぶんとその緑を濃くさせてきている。木々の葉も若葉の頃を思い出すことがあるのだろうか。小路は、葉に例えれば、さしずめ葉脈だろうか。
若葉の頃の、みずみずしさを失わないようにと、小路を歩く今日。
教育長 福與 雅寿(ふくよまさとし)