- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県中野市
- 広報紙名 : 広報なかの 2025年8月号
地域の未来を照らすみなさんを紹介します。
■向上心がある限り、人は成長できる
バリトン歌手 中村詞文
なかむら・のりふみ 中野市松川出身。武蔵野音楽大学大学院修了。卒業後は音楽座ミュージカルに入団。
退団後もオペラ、ミュージカル、映像メディアに多数出演。
第2回東京国際管弦声楽コンクールにてミュージカルプロフェッショナル部門の第1位および東京新聞賞を受賞。
現在は幅広いレパートリーを生かして、TikTok歌配信ライバーとしても活躍。東京国際芸術協会演奏家会員。
「両親ともに大の音楽好きで、物心付いた時には音楽が身近にありました。父がギターを弾きながら歌っているのが日常でしたね。」
オペラやミュージカル、歌謡曲、J-POPなどジャンルを問わず活躍する中村さん。幼い頃から歌うことが好きだったという。
「中野小学校の合唱団で、コンクールに向けて頑張っていました。何回かソリストをやらせてもらったこともあります。」
その後、音楽とは離れた部活に取り組んだ中学、高校時代。しかし、進路を考えた時に浮かんだのはミュージカルや舞台の世界だった。専門学校や養成所に通うことを考えていたが、四年制大学に通ってほしいという両親と対立したこともあったそう。そんな時、『音楽大学』の選択肢に気付かせてくれたのが4歳から習っていたピアノの先生だった。
「自身の母校を勧めてくれました。声楽を基礎から学びたい自分と、両親の希望も叶えられる。これしかない進路だと思いました。あの提案がなかったら…いまだに想像できませんが、音楽の道に進んでいない可能性もあったなと。先生には本当に感謝しています。」
大学卒業後は音楽座ミュージカルに入団。クラシック音楽とは違うミュージカルの発声方法や、未経験だった演技などプロの世界に圧倒されながらも、戦力になるために技術を磨いた。
「とにかくがむしゃらに。フィジカル的に恵まれてるわけではないけれど、自分は自分。中村詞文としてレベルアップするにはどうしたらいいかを考え続けました。」
ミュージカルやオペラも一流のものに生で触れることで、常に目指すものを更新していると話す中村さん。音楽と向き合う上で大切にしているのは「学び続けること。学ぶことをやめた時点で衰える。好きな音楽で自分の最高点を出すこと、出し続けることを諦めたくないと思っています。」
中村さんに今後の目標を聞くと、「あえて決めていない」と笑う。
「目標が具体的であればあるほど視野が狭くなってしまう。決めていないことで何にでも挑戦できるし、身軽に動けると思っています。目の前のことを全力でやれば次のステージはおのずと見えてくる。そんな自分が届ける音楽が皆さんの楽しみであったり、人生の癒しになったらいいなと思います。