くらし 特集 東御の風が育てるワイン ~ワイナリー開業の地に“東御”が選ばれる理由~(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県東御市
- 広報紙名 : 市報とうみ 2025年12月号
■Tomi Wine Times Vol.3 特別編
▽15のワイナリーが紡ぐまちの新しい文化
市内には、現在15のワイナリーがあり、この地に魅せられて移住してきた人たちが、情熱を注ぎながら地域と歩みをともにしています。
東御の風土が醸す味わいは、暮らしの風景の一つになりつつあります。なぜ多くの人が東御を選び、ワイナリーを開業しているのか。今回は、その理由に迫りました。
▽ワイン特区認定で広がる〝とうみワイン〟の挑戦
巨峰産地のパイオニアとして発展してきた東御市では、果樹生産に適した地理的・気候的条件を生かし、加工用ぶどうの導入が進んでいました。特に、昼夜の寒暖差と長い日照時間は、ワイン用ぶどうの栽培に最適な環境を生み出しています。
こうした可能性を受け、市では早くから特区制度を活用してワイン産業の振興に取り組んできました。
平成20年には「とうみSunライズ ワイン・リキュール特区」として県内で初めて認定され、小規模事業者でもワインづくりに挑戦できる環境が整いました。
その後、この取り組みは近隣の市町村にも広がり、平成27年には「千曲川ワインバレー(東地区)特区」として再度認定され、ワイン産業を支える制度基盤がさらに強化されました。
▽日本初の実践的ワイン教育機関
「千曲川ワインバレー(東地区)特区」として認定された平成27年には、日本初の実践的ワイン教育機関である「千曲川ワインアカデミー」が民間により開講されました。アカデミーでは、ぶどう栽培から醸造、販売、経営まで、ワインづくりに必要な知識と技術を体系的に学ぶことができます。
こうして育った卒業生の多くが東御市や周辺地域でワイナリーを立ち上げており、地域の風土を生かした個性あるワインの誕生につながっています。アカデミーは、人材育成の拠点としてだけでなく、地域に新しい産業や担い手を生み出す役割も果たしています。
▽〝東御〟が選ばれる理由
こうしたぶどう栽培に適した恵まれた風土、特区制度による開業しやすい環境に加え、ワインづくりに必要な知識と技術を基礎から学べる教育機関の存在が後押しとなり、東御市はワイナリー開業の地として多くの人に選ばれるようになってきました。
そして今、移住者がもたらす新しい文化が息づき、「ワインシティ・とうみ」の物語はこれからも続いていきます。
◆ワイナリー開業者インタビュー
「ツイヂラボ」オーナー 築地 克己(ついぢ かつみ)さん
[ワイナリーmemo]
ツイヂラボ
・2020年9月に開業(市内11番目)
・愛犬の「くるみ」と「もも」をモチーフにした可愛らしいラベルが人気
・年間10000本のワインを生産
東御市には、15場のワイナリーがあります。この15場という数字は、ワインの先進地である塩尻市に迫る勢いです。
さらには、そのオーナーは全員が市外や県外からの移住者。なぜ移住者が次々と東御市を選び、ワイナリーを開業しているのでしょうか。
今回は令和2年9月にワイナリーを開業した「ツイヂラボ」オーナーの築地さんに話を伺いました。
Q:東御市に移住されたのは、もともとワイナリーを始めるためだったのですか?
ワイナリーを始められる方はそういう方が多いと聞いていますが、私は、ワイナリーをやりたくて移住したわけではないんです。東御市に来たのは、本当に偶然。あらかじめ計画していたわけではなく、人との縁がつながって、気づけばワインづくりにたどり着いていました。
Q:ワインづくりを始めるきっかけとなった「転機」は何だったのでしょうか?
私が銀行員として、サンフランシスコに勤務している時に出会った、東御市のぶどう農家さんです。
当時、生食用ぶどうを栽培している東御市の農家さんと知り合ったことが、すべての始まりでした。帰国後にはその方を訪ね、東御市へ頻繁に通うようになりました。
Q:訪れるなかで、東御市のどんなところに惹かれたのですか?
北アルプスのパノラマ、千曲川を望む景色、そして地元の食とワインです。
ヴィラデストワイナリーで地元食材の料理とワインを味わい、晴天の多い気候や暮らしの豊かさを実感するたびに、この場所が心地よく感じられました。やがて、「愛犬とゆっくり泊まれる場所がほしい」と思い、築50年の家を購入しました。
Q:ワインを始めるきっかけは何だったのでしょう?
地元の人から誘われたことです。東御市で過ごす時間が増えると、周りの方から「家があるなら住民票を移してワイン畑始めてみたら?」と声をかけてもらいました。
Q:栽培の際、困ったことはありませんでしたか?
隣接するヴィラデストワイナリーのスタッフに助けられました。ツイヂラボの畑はヴィラデストの畑に隣接していたため、植栽を始めてからの2年間ほどは、わからないことをスタッフの皆さんに教えていただきながら栽培しました。
Q:振り返ってみて、東御市でワインづくりをして良かったと思う瞬間は?
偶然とご縁に恵まれて今があることが、とても幸せだと感じます。計画して移住してきたわけではないからこそ、「この地でワインをつくってよかった」と心から思えます。
Q:市民の皆さんへ、伝えたいことはありますか?
ぜひワインフェスタなどのイベントで東御のワインを楽しんでほしいです。
そして、友人や親戚に東御の魅力を語るときに、「ワインが有名なんだよ」とぜひ伝えてください。東御のワイン文化を一緒に広げていけたら嬉しいです。
▽日本のワイナリー数トップ3

出典:令和6年12月国税庁課税部酒税課酒類製造業及び酒類卸売業の概況
▽長野県内のワイナリー数トップ3

出典:長野県
※令和7年9月末時点
