くらし 小海の植物 草木染からの色の物語

文:草木染の会 四反田有弘
「草木染の会」主宰 森林インストラクター

『赤』
太陽によって一日がアケル、その言葉が「アカ」になった。赤は正に神の色といえる。太陽は高く昇り、人に光を与え、植物を育む。そして西の空に傾くときには、その光に感謝し、それから暗闇の世界に入る事への一抹の寂しさをこめ、地平線に沈み行く太陽を見送りながら祈った。そして暗闇の中に光を与え、獲物を焼き、煮炊きして生活に安らぎをもたらす「火」を発見。さらに人間の体内に流れる生命の源である「血」にも赤を発見したであろう。「陽 火 血」という赤色のものは生きて行く根源であり、生活の中にも赤を現わしたいと感じ、赤によって人目を引き付けたいとした。こうして日本人は生活の中で、四季折々の植物や天然現象などを身近にし、そこから感受したものを色名としてきたと言える。飛鳥時代聖徳太子による「冠位十二階制」が染織を発展させ、その材料の植物や景色の変化に名を付けてきた。それ故に、日本の伝統色二二五色の内植物名が一五〇種あり六十六%に対し、英仏のそれは三十%で、鉱物名が多い。
赤色には抽象的なイメージとしては〔威厳・情熱・愛情〕と〔革命・危険・魔除〕などがあります。正月には赤飯(小豆色)を炊いて祝います、そこには南天を添えます、これは邪気を払う、難を転じるの意味があります。また正月飾りに用いられる橙は〔代々栄える〕縁起から。二月は「節分」です、京都の神社では追儺式で平安王朝絵巻の彩り鮮やかな装束(黄丹色(おうにいろ))で豆を撒いて厄除け・招福を祈ります。三月は「桃の節句」「雛祭り」です、平安時代の〔流し雛〕新生児の厄を人形に移して無病息災を祈るが由来です。桃(桃染色)を飾るのは、古くから桃は女性を象徴し、邪気を祓う縁起物とされてきました。こうして一年の初めは邪気を祓って、招福を「赤色」に託したのでは無いでしょうか。これらの色出しの染材料は〔茜〕〔紅花〕〔蘇芳〕と補助的に梔子・黄蘗を使います。
尚、平安神宮や宮廷、神社の鳥居に朱色で彩色されるのは邪気払いと権威の象徴を表わすと云われています、材料の朱・弁柄は土から取れた金属化合物です。