くらし 特集 未来を変えるつながる力(2)

ー実際に、自治会長として取り組まれたことを教えてください。ー
熊崎:私は、デザインなどの仕事をしているので、自分にできそうなこととして「万場自治会通信」というちょっとした広報紙を作って配るようにしました。自治会の活動って、当事者以外には意外と見えていないんです。そこでまずは、活動の見える化をしてみようと思いました。10月は9月に初めて参加した防災訓練の内容や感想、今後の予定をなるべく分かりやすいようにまとめました。「文字が小さい」という声があれば、文字も大きくし、写真もたくさん使いました。活動が見えないことが自治会への嫌悪の原因なら、やっていることが一目でわかれば、自治会活動の参加につながるかもしれないと考えています。
今は「自治会長の仕事の見える化」に取り組んでいますが「役員の仕事の見える化」もやりたいです。これらを自分の中で、楽しもうと思ってやっています。次の人に仕事を引き継ぐことを考えると、動けなくなってしまうので、今できる最善を考えるようにしています。
髙井:みんなで地域のことを話し合えたらなと思い、「とびだせ市長室」という市長と意見交換できる仕組みを活用して、自治会の将来を考える場を企画しました。72世帯のうち20人が参加してくださり、子どもや女性、若い夫婦など幅広い年代の人が集まってくれました。小学5年生の子どもが「自治会長をやりたい」と言ってくれる場面もありました。大人たちが明るい未来について話し合う姿を子どもたちに見せたいと思っていたので、うれしかったですね。
それから、どの活動の時も、明るく前向きな雰囲気を作りたいと思ってやっています。まずは自分が楽しむこと。大きな声でハキハキと話すこと。それだけでも変わります。
瀧上:活動はいろいろやりましたね。自治会に対してネガティブなイメージを持っている人が多いと感じていたんです。高齢化で苦しんでいる自治会もたくさんあって、自分の自治会もいずれ同じような状況になるんだろうなと考えていました。そこで、自治会の活動を続けていくためには、負担感を減らすこと、ハードルを下げることが必要だと考えました。
まず取り組んだのは、役員の仕事の明確化と負担の軽減です。「良いものを作らなくては」と頑張り過ぎると、だんだん無理が出てきて、「役員はやりたくない」「負担が大きいから自治会を辞めたい」という声が出てきてしまうんですよね。それを防ぐために、役員の役割を明確にして、誰にでもわかりやすく、できるだけ単純化しました。また、役員は責任はあるけれど権限がなかったことから、規約の変更もして、役員会で決められることと総会で決めることも明確化しましたね。
さらに、以前は公開していなかった会議などの議事録を、毎月デジタル掲示板を通じて発信するようにしました。年度末には閲覧者数が200人から400人にまで増えました。こうして活動を知ってもらえることで、参加しようかなと思ってくださる人が増えていくことを期待しています。

ー中部台自治会は若者視点での活動もされていますね。ー
瀧上:自治会内だけで全てを担おうとすると、負担が大きく立ち行かなくなるということは、昨年参加した自治会座談会で聞いていました。そのため、企業や若者の力を活用してイベントを作りました。
若者が主体的にさまざまな活動を行う「地域活性化スクールプロジェクト」という取り組みがあり、そこに参加している高校生に協力を依頼し、遊びの企画から運営まで行っていただきました。
困った時に「助けて」と相談できる先を作っておくことが、長続きさせる秘訣だと思っています。隣の自治会と良好な関係を作ることも大切ですね。「困った時はお互い様だね」と言える温かい関係を作りたいです。

ー皆さんが考える「自治会の必要性」について教えてください。ー
熊崎:いざというときに助け合えるのが自治会だと思います。もし災害が起きたとき、自治会があれば、助けたり助けられたりすることができる。そのために、今は防災倉庫の整備に取り組んでいます。進めるにあたっては、自治会員に防災倉庫にどのような物資が必要かアンケートをとりました。「自分ごと」として危機感を持ってもらえると住民の意識も変わってくるのではないかと思っています。
髙井:ゴミを捨てるために自治会に入るとか、利便性やメリット、デメリットだけで判断するという発想では、自治会の本質を見失ってしまうのではないかと思います。本来、自治会とは生活の一部であり、生きるために必要なものです。この考えをしっかり伝えたいし、共感してくれる皆さんと協力していくことで、もっと良くなるのではないかと考えています。
瀧上:「自分たちでできることは自分たちでやる」、それが自治の基本だと思っています。しかし、働き方や生活スタイルが変わり、何十年も前のままの形で自治会を存続できるかというと、それは難しいです。「今の生活スタイルでどうしたら自治を維持できるのか」を考え、話し合わなければならない時期が来たのではないかと思います。自治会で大切なのは「自分たちで決める」ということ。自分たちの暮らしに密接に関わることを自分たちで話し合い、決めていける場、それが自治会です。今、地域のことは「仕事と生活に追加して行うこと」と位置付けている人が多いと思います。そういった地域のことに取り組む中で、「自分たちに何ができるか」を考える、その選択肢の一つとして、自治会があるといいなと思います。