文化 歴史の小箱 No.439

■郷土ゆかりの作家 北山敏(きたやまびん)
学校には、卒業生や地域の人たちから寄贈された郷土ゆかりの芸術家の作品を中心に、多くの美術資料が今日まで受け継がれています。それらは玄関や廊下、会議室などに飾られ、学校に通う子どもたちがいつでも見られるようになっています。
今回は、現在開催中の企画展「学校の美術品展 Part2」で取り扱う作家の中から北山敏さん(サイエンティストandアーティスト、安曇野ビンサンチ美術館館長)について紹介します。
北山さんは昭和二十四年(一九四九年)に三島市で生まれました。子どもの頃から理科と絵が大好きで、高校時代には画家・芹沢晋吾(せりざわしんご)に師事し、本格的に絵の世界へと進みました。その後、現代美術や版画、ガラスエナメル彩などを複数の師のもとで学び、版画工房の助手として版画の摺りに携わるなど、表現の幅を広げていきます。
また、大学院では分光学や結晶学を学び、三十歳から七年間、「学習院エコトキシコロジー研究所」の主任研究員(環境毒性生態学)としてつとめるなど、環境科学の分野でも活躍しました。
こうした科学と芸術の融合から生まれた「マイクロ クリスタル アート」(Micro Crystal Art)作品は、一滴のコーヒーやワイン、醤油などが結晶化する過程を観察し、その一瞬の美をカメラで切り取ることで芸術作品に昇華したものです。これらの作品は、ポーランドやスペインをはじめとする海外の展覧会で高い評価を得ています。
そんな北山さんの作品の中には「自然」をテーマにしたものもあります。この作品制作には、子どもの頃に楽寿園や三嶋大社などで自然観察をして遊んだ体験が強い影響を与えています。市内の小中学校、発達支援センターに寄贈されたふくろうの絵もその一つです。妻・早苗さんと協力して描いた作品であり、散歩で拾った落ち葉などの自然素材をスキャンして取りこんだ色や形を使い、CG(コンピューターグラフィックス)として制作したものです。
最近、北山氏はこのふくろうの絵にAR(拡張現実)という新たな命を吹きこみました。専用アプリをインストールしたタブレットを作品にかざすと、作品中のフクロウやミクロの結晶が飛び出してきます。企画展の会期中に行う展示解説では実演もしますので、ぜひ郷土資料館にお立ち寄りください。

楽寿園内の郷土資料館では、企画展「学校の美術品展 Part2」を令和8年2月8日まで開催中です。
展示解説は11月1日(土)・12月6日(土)午前11時・午後1時30分。12月6日は作家・北山敏さんがゲスト参加します。

問合せ:郷土資料館(楽寿園内)
【電話】971・8228