くらし [特集]縁(えん) 地域を支える共助のチカラ(1)

■変わりゆく近所付き合い
隣近所との関係を表すときに使われる「向三軒両隣(むこうさんげんりょうどなり)」。文字通り、自分の家の向かい側にある三軒と、両隣にある二軒を指す言葉である。また、国語辞典を引くと「日頃、親しく交際している近隣」とも解説されている。困った時は隣近所の助け合いが当たり前だった時代から、良好な関係を築くべき間柄の例として使われてきた言葉なのであろう。
現在、その実態はどうか。令和6年度に内閣府が実施した調査によると、付き合っている(よく付き合っている、ある程度付き合っているを含む)は、54.2%、付き合っていない(あまり付き合っていない、全く付き合っていないを含む)は、44%との回答であった(図1参照)。調査方法が異なるため単純比較はできないが、時代の変化とともに、地域での付き合い方が希薄化していることが読み取れる。

■家族形態・働き方の変化
近所付き合いの変化とともに、家族の形も変わり続けている(図2参照)。本市では、人口減少が続く一方、世帯数は増加している。単身世帯や核家族の増加が考えられる。また、コロナ禍を機に働き方も多様化。場所を選ばず仕事が可能となったことで、居住地の自由度が増した。そうすると、隣近所との付き合いが希薄になることは、自然の流れなのかもしれない。

■関係性の希薄化が招く課題
住民が望ましいと考える、地域での付き合い方も変化が見られる。内閣府の調査(図3参照)によると、行事・会合への参加、困ったときに助け合う間柄を望む人の割合は、コロナ禍を前後して微減している。依然として回答選択肢の中では、最も回答者の割合が多いものの、この傾向が続けば、他者への関心は薄れてしまうだろう。各個人が、地域との関わりを断てば、そこで何が行わているのかは見えなくなる。そうなれば、自治会やコミュニティなどの地域主体の組織は成り立つのであろうか。コロナ禍を経た今、他者を思う支え合い気持ちで続いてきた地域の活動の在り方は岐路に立っている。