くらし 再発見!わがまちの文化財・施設紹介 vol.227

■鳥居強右衛門像の流布
天正3年(1575)長篠・設楽原の戦いで活躍した鳥居強右衛門(とりいすねえもん)の名は全国的に広く知られていますが、皆さんは鳥居強右衛門といえば何をイメージしますか?
例えば、長篠城の窮地を救うために奔走した勇敢な人物像でしょうか。国道151号沿いに建つ、長篠城跡の案内看板に描かれた「大きな目を見開き、褌(ふんどし)一丁、大の字姿で磔柱(はりつけばしら)に縛りつけられている姿」でしょうか。
その印象的な姿は、強右衛門の行動を讃えるために描かれたとされる落合平左次道次背旗(おちあいさへいじみちつぐせばた)(東京大学史料編纂(へんさん)所蔵)の図像が元ネタになっています。この図像は、江戸時代後期に写本がいくつも描かれており、武家社会に流布しました。また明治時代には、強右衛門の勇気ある行動が浮世絵や錦絵の題材に取り入れられ、さらに歌舞伎狂言の作品にも登場し、一般市民へと広まりました。
さらに、明治時代から大正時代には、強右衛門の生き様が軍人のあるべき姿として教材にも採用されており、教育の場をも介して子どもたちに教え込もうとしたようです。
彼の活躍と人物像は、絵画・芸能・文筆などの様々な媒体のほか、各時代の社会的背景によって上手く利用され、大人から子どもへ広く伝わってきました。
また、今年は長篠・設楽原の戦いから450年の節目を迎えます。これまでに遺された史料や口伝などを受け継ぎ、さらに450年の年月を折り返して後世へと伝えられるよう、大切な1年にしていきたいですね。

問合せ:長篠城趾史跡保存館
【電話】32-0162