スポーツ 夢キラリ人

■出会いに感謝し、描く自転車競技の未来
愛三工業レーシングチーム 窪木一茂さん

照り付ける太陽の下、風を切ってペダルを踏む。心にあるのは、静かな炎。自らの能力を最高値で出すことだけに集中する―。
窪木一茂さん。愛三工業レーシングチームに所属し、日本代表選手として出場した「2025トラックアジア選手権大会」(2月・マレーシア)では、トラック競技の男子個人パシュートで、アジアと日本の両方で新記録を樹立し、金メダルを獲得しました。リオ五輪・パリ五輪にも出場するなどベテランの選手で、華々しい経歴は枚挙にいとまがありません。
幼い頃から、夢はスポーツ選手。高校入学時に見学した自転車部で、日本代表のジャージーを着る先輩の姿を見て、自分も代表になると決意します。才能は開花し、高校2年生で出場した国体で優勝。その後、日本大学に進学します。
自分に大きな変化を与えたのは大学生活だったと話す窪木さん。体育会系の寮生活は、練習も上下関係も厳しく、1年目は思うような結果が出せずに過ぎたそう。しかし、下級生が入った時、個人ではなくチームを意識して目標を持つ大切さに気が付きます。チームのために何ができるかを意識することで、つらい練習にも目的意識が芽生え、結果を出せるようになったと話します。
競技に向き合う姿勢に対して、自らのことを「楽観的で、大器晩成型だと思っていた」と笑顔を見せます。反省はしても結果に固執せず、勝利に気負いがなかったのが続けてこられた一因だと話します。「こどもの頃から、両親が干渉せずに運動させてくれたことで培われたんだと思います。自分自身が結果との距離を保てるのは、この両親のスタンスのおかげです」と感謝の気持ちを話します。
現在競輪の上位クラスでも活躍し「ロード・競技・トラック、競輪と、自転車競技の垣根を超え、懸け橋となって楽しさを広めたい」と話す窪木さん。春の大型連休に開催される日本選手権にも出場します。
「目標は、39歳での挑戦となるロス五輪。応援の声をエネルギーに、金メダルを持ち帰って応えたい」と強いまなざしで話します。
ペダルをこぐ先に見えているのは、出会った人々の姿なのかもしれません。