くらし ガイドボランティアが体験した伊勢湾台風

伊勢湾台風から令和6年9月26日で65年が経過しました。このコーナーでは、現在ガイドボランティアとして活躍しているメンバーの被災体験を紹介します。

◆(12)元の生活にもどすために奮闘

当時、我が家では取引先から大きな巻き糸を預かり、機械で織物にして納入する仕事をしていた。あの日、自宅は床下浸水だったが潮の干満によって水位が変わったので、預かりものの巻き糸を水でぬらさないよう必死に守った。後で取引先の津島の業者が巻き糸を取りに来てくれて、舟に乗せて高台で預かってもらった。

その後は西保(現愛西市)の知人宅に避難し、各地から届いた乾パンや衛生用品などの救援物資を各家庭に分ける手伝いをした。しかし、物資はたくさん届いたわけではなかったので、配分の調整が大変だった。

11月くらいに水が引いた後は自宅に戻った。すぐにでも仕事を再開したかったが、まず自宅の泥の掃除や片付けをしなければならなかった。織物の機械の汚れを取って油を差したり磨いたりし、故障した部品を買い直して取り替え、試運転を行って、やっと再運転できた。再開までには2か月くらいかかったと思う。

当時は周囲にいる人みんなが被災者だったので、片付けや掃除の手伝いも頼めず、ほとんど両親と自分だけで行う作業はとても大変だった。しかし、当時は物価も安く、高価な物はもともと持っていなかったので、「がんばったら元の生活に戻せる」という気持ちでやっていた。

服部斌、当時18歳
※令和7年に他界されましたが、生前のご意向を受けて掲載いたします。