- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県
- 広報紙名 : 県政だより みえ 令和7年8月号
三重で地域の発展や課題解決に貢献している人・団体を紹介
伊勢市 伊勢市地域おこし協力隊 伊勢根付継承・啓発部門
田中(たなか) 彩音(あやね)さん
兵庫県出身。伊勢根付彫刻館で、県指定の伝統工芸品「伊勢根付」の職人を志しながら、魅力を発信中!
■「伊勢根付」を未来につなげたい!
▽伊勢市に移住したきっかけを教えてください
私は、2023年に伊勢市に移住するまでは、大阪を拠点に活動していました。大学の美術コースで学んだ後、さまざまな企業のものづくりへの思いをパンフレットやウェブサイト、映像制作などを通して届ける仕事をしてきました。「いつかつくる側に回りたい」という思いがずっとあり、求人を探していたところ、偶然、伊勢根付の継承・啓発を行う地域おこし協力隊の募集を見つけ、応募しました。
▽どのような活動をしていますか?
現在は、伊勢根付彫刻館の故中川師匠のもとで学んだ技術を反復し、技術習得に励みながら、ワークショップの開催や地域の中学校への出張授業などを行っています。
伊勢根付は、江戸時代に印籠(いんろう)や巾着などを持ち歩く際に用いられた実用品で、お伊勢参りの土産物として親しまれてきました。現在は、実用品としてではなく、芸術作品として扱われているため、敷居が高いイメージを持たれています。気軽に根付に触れてもらえるよう、活動をSNSで発信したり、根付に関する小冊子を制作・発行したりしています。実際、SNSを見て根付を知った方や工房に来てくださった方もいて、根付の良さを多くの方に感じてもらうことができ、すごくうれしく思います。伊勢の人みんながかっこいい根付を持つのが当たり前になるくらい、根付が身近な存在になることをめざして活動し続けていきたいです。
▽田中さんの目標を教えてください
職人として一人前になり、協力隊の任期後も伊勢根付を彫り続けることです。伊勢根付は、古くから、勝負事の縁起物とされてきた「勝ち栗」をイメージした「栗」や、伊勢参りから無事に帰ることを願う「カエル」をモチーフにしたものなど、持つ人への思いやりを込めてつくられます。根付に込められた思いに触れた時に、周囲を思いやる心の大切さに改めて気付かされます。根付を通して、作品の先にある「思い」まで感じてもらえるよう、魅力をしっかり伝えていけたらと思います。
伊勢根付を継承するためには、職人として生活していくための基盤づくりが必要です。伊勢には根付の専門店がなく、商談の場がありません。誰でも気軽に作品を見て、触れて、買える専門店を開き、職人さんが制作に集中できる環境や販売の仕組みをつくれたらと思い、修行と並行しながら準備を進めています。
中川師匠の伊勢根付への思いや職人としての「心」を理解し、受け継いでいける、そんな職人をめざしています。