- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県伊勢市
- 広報紙名 : 広報いせ 令和7年12月1日号
市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院
内科・総合診療科副部長
谷崎 隆太郎 医師
質問:HPVワクチンってどんな効果があるのでしょうか?
回答:子宮頸がんで死亡する人が激減する効果が期待されています。
■子宮頸がんの発生原因
HPVとはヒトパピローマウイルスの略語で、1983年頃からの研究で子宮頸がんの原因になることが発見されました。発見者のハラルド・ツア・ハウゼン医師には、2008年にノーベル生理学・医学賞が授与されています。実は、HPVには200種類以上の型があり、その中でもハイリスク型と呼ばれるいくつかの型が子宮頸がんの発生と関連しています。HPVに感染してもすぐにがんが発生するわけではなく、体から排除されずに持続的に感染すると、異形成というがんの前段階を経て、がんが発生します(異形成の中でも、よりがんに近いものを前がん病変と呼びます)。2006年にHPVワクチンが世界中で接種されるようになり、日本でも2009年から接種可能になりました。
■ワクチン接種の高い効果
HPVワクチン接種によって、そもそもHPVへの感染を予防してくれるだけでなく、子宮頸がんの発生および前がん病変の発生が大きく減少することが科学的に示されています。例えばスウェーデンで17歳未満にHPVワクチンを接種したところ子宮頸がん発生の割合が88%低下したというデータ 1)や、スコットランドで12・13歳にHPVワクチンを接種したところ、最もがんに近い前がん病変の発生割合が89%低下したなど 2)、凄まじい効果が報告されています。日本人を対象とした研究でもHPVの感染自体を予防する効果は80-90%と高い水準が報告されています 3)。
■医学は日進月歩
かつて日本ではHPVワクチン接種後に全身の痛みや運動障害など神経の異常が起きたため、ワクチンとの関連が否定されるまで積極的な定期接種勧奨が差し控えられた時期がありました。その後、HPVワクチンを接種した人たちとしていない人たち約3万人のデータを比較した研究では、両群の間に症状の発生割合に有意な差は見られなかったことが確認できたため 4)、再び接種が勧奨されるようになりました。
この接種の勧奨が控えられた影響でHPVワクチンを定期接種できなかった人たちには条件付きで、キャッチアップ接種という制度が定められています(17ページの健康づくり通信にも掲載しています)。詳しくは厚生労働省や伊勢市のホームページをご確認ください。
HPVワクチンに限らず、がんを予防できる方法は各分野でどんどん見つかっています。ホント、医学の発展にはいつも驚かされるばかりですね。
※子宮頸がんをさらに減らすには、HPVワクチン接種だけでなく定期的に子宮頸がん検診を受けることが推奨されています。
1)N Engl J Med 2020;383:1340-8.
2)BMJ 2019;365:l1161.
3)子宮頸がんとその他のヒトパピローマウイルス(HPV) 関連がんの予防。ファクトシート2023. https://www.ncc.go.jp/jp/icc/project/Cross-Organizational/factsheet/index.html.
4)Papillomavirus Res 2018;5:96-103.
過去の「広報いせ」掲載分は、市のホームページでいつでもご覧になれます。
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