- 発行日 :
- 自治体名 : 三重県伊勢市
- 広報紙名 : 広報いせ 令和7年10月1日号
市民の皆さんの健康などに関する素朴な質問に対し、谷崎医師が「総合診療科」の観点から、分かりやすくお答えします。ぜひ、皆さんの生活にお役立てください。
伊勢総合病院 内科・総合診療科副部長
谷崎 隆太郎 医師
質問:体調が悪そうな人と接した覚えがないのに、新型コロナになりました。どこから感染したのでしょうか?
回答:おそらく無症状の誰かから感染したのでしょう。
■症状がなくても感染は起こる
世の中ではあまり注目されなくなった新型コロナですが、いまだに定期的に流行を繰り返しています。その波は医療機関や高齢者施設でも同様で、しばしば新型コロナが発生することがあります。
新型コロナの症状は、のどの痛み、発熱、咳、痰、鼻水、頭痛、関節痛、だるさ、味覚・嗅覚障害など実に多彩です。これらは風邪など他の感染症でも起こりうるため、症状だけで新型コロナかどうかを見抜くことは、ほぼ不可能です(ただし味覚・嗅覚障害は比較的特徴的です)。
では、症状のある人をすべて検査すれば見落とさないかというと、そう簡単ではありません。成人の感染者のうち約40%は無症状であり、本人に自覚がなくても他人に感染させてしまうため、「いつ、誰から感染したのか分からない」というケースが非常に多いのです。このような無症状者を全員検出するには、毎日全員に検査を行うしかありませんが、それは現実的に不可能です。
■他の感染症にはない特徴が!
さらに、通常の感染症は発症した直後に他人に感染させるピークを迎えるのですが、新型コロナは症状が出る前の「無症状の時期」に他人に感染させるピークが来ます。人類が歴史上そんな感染症に遭遇した例はなく、この新型コロナの特徴は、2020年当時、世界中の医療関係者に衝撃を与えました。私たちは普段「具合が悪そうな人から病気をもらう」と考えがちですが、新型コロナはその常識を覆したのです。「今日元気な自分が、明日新型コロナを発症するかもしれない」と思いながら生活している人がどれだけいるでしょうか…(もちろん私も、明日も健康だという前提で毎日を生きています)。
■大切なのはいたわる心
というわけで、感染が広がるのは個人の不注意や怠慢などではなく、ウイルスの特性によるものです。「誰からうつされたのか」「責任は誰か」といった疑念に駆られていてはウイルスの思うツボです。誰しもが感染しうるこの世界で必要なことは差別や非難ではなく、「発症したのね、お大事に」といった病んだ人をいたわる心なのです。
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