その他 (続)尾鷲の植物誌

■タラヨウ(モチノキ科)
中村山公園にはクスノキやアラカシ、コジイ、コナラなどいろいろな樹木が見られ、さながら街中の小高い丘にある樹木園のようです。公園内の歩道沿いには樹高10mほどになるタラヨウも生育しています。タラヨウは静岡県以西の本州太平洋岸、四国、九州に分布し、厚くて長さ20cmほどになる大きな葉をつける常緑(じょうりょく)の高木です。
この葉の裏に堅いもので文字や絵をかくと、やがてその部分が黒く浮き上がってきます。この文字や絵は数年経っても消えることがなく、紙が希少であった時代、その代用品として利用されていました。タラヨウ(多羅葉)という名前は、古代インドで経文(きょうもん)を書くのに使用したという多羅樹(たらじゅ)(ヤシ科のウチワヤシ)の葉になぞらえたものです。
植物は虫などに食べられないよう、細胞内にいろいろな防衛物質を作ります。柿の渋みとなるタンニンもその一つで、虫が嫌う物質です。タンニンはまた、空気に触れると酸化され、黒褐色に変化する性質ももっています。タラヨウの葉にはタンニンが多く含まれているため、堅いもので押しつけ細胞を壊すと、そこからたくさんのタンニンが細胞外に出て空気と接触し、その部分が絵や文字として浮き上がります。ちなみにタラヨウはハガキノキ(葉書の木)という別名をもっています。