その他 (続)尾鷲の植物誌

■ヘビイチゴ(バラ科)
ヘビイチゴは人家近くの日当たりの良い空き地などによく見られ、日本全土に分布する小さな植物です。実は食べられますが、甘みがなくうまいものではありません。果実はイチゴと同じ作りで、赤い膨らみ(花托(かたく)といいます)があり、その表面にたくさんの赤くて小さな粒が散らばっています。じつはこの粒1つずつが果実で、その中に種子が入っています。他の草のように立ち上がることはなく、ランナーを伸ばしながら地面を這(は)って広がっていきます。このようすがへびのように見えるところからヘビイチゴの名がついたともいわれています。
ヘビイチゴの果実にはアリの好む物質が付着しています。アリはこの物質に引き寄せられ、果実を巣まで運びます。運ばれた果実は巣の中でアリの好きな部分だけが食べられ、種子の部分は発芽能力を失うことなく地中に長く保存されることになります。13年も地中に埋まっていた種子が発芽したという報告もあります。鳥は果実をまるごと飲み込み、種子を遠くまで運んでくれます。ヘビイチゴは動物を巧みに利用して時間的な移動と空間的な移動の両方ができる技を持っています。