くらし 新春 ドリーム対談 初音の響(はつねのひびき)

■言葉を超える音楽のチカラ
マリンバ・打楽器奏者 宮本 妥子(みやもとやすこ)さん×津軽三味線奏者 多田 智大(ただちひろ)さん

明けましておめでとうございます。
2026(令和8)年の幕開け、この1年にかなえたい夢はありますか。
音楽の世界で活躍する、市内在住の洋楽器と和楽器の演奏家お二人によるスペシャルな対談が実現しました。

●音楽との出会い
宮本:私は静岡県で生まれました。父親はオペラが大好きで、母親は木琴が大好き。気づいたら家に大きなマリンバが置かれていて、姉と私もマリンバをやるようになりました。音楽が身近にあって、自然と出会った感じです。
多田:祖母が趣味で三味線(民謡)をやっていて、発表会についていったりする中で三味線に出会いました。それが小学1年生の時で、もともと目立ちたがりで舞台に立ってみたいと思っていました。

●演奏している楽器の魅力
宮本:机でもなんでもたたけば音が鳴りますから、打楽器は原始的な楽器です。その原始的な楽器で、どれだけきれいな音を出せるかを追求するのが魅力といえます。マリンバも、もともとはアフリカ生まれで木をたたいて演奏していました。西洋音楽の楽器としての歴史は、まだ100年くらいしかありません。
多田:津軽三味線の歴史も150年くらいです。もともとは目の見えない人が門付け※で、生きるためのお米やお金をもらうための楽器だったそうです。津軽三味線の魅力である気迫のある演奏は、先人の生命の音色といってもいいかもしれません。津軽三味線のような和楽器は、決まった音階はあるけれど、曲や音の使い方が整いきっていないのが特徴であり魅力です。
※門付け…門口や玄関先で披露して金品を受け取る形式の芸の総称

●演奏活動の近況
多田:演奏家として舞台ではプロのつもりですが、高校生でもあって、大学進学を目指しています。津軽三味線の演奏で、音楽の基礎を学ぶ機会はこれまでありませんでした。和太鼓とかピアノとか、いろいろなジャンルの人とのコラボレーションで勉強しながら力をつけているところです。
宮本:私はマリンバを始めて半世紀がたちます。最近はアウトリーチ活動に力を入れていて、これまで300公演くらいやりました。子どもたちのいる教室に大きな楽器を置いて、みんなの息遣いが聞こえるくらいの距離感で音楽を聴いてもらう活動です。好きなもの、興味のあることに出会って思い切り続けてみたら、将来それが職業になるかもしれないし、人生の糧になると思う。それを伝えたいと思っています。

●演奏家の苦労と音楽のチカラ
多田:実は、世界チャンピオンといわれるのが嫌です。トロフィーに歴代優勝者のペナントがついていて、尊敬する演奏家の名前がずらりと並んでいるのを見ると「この人たちの肩書に泥を塗ったらあかん」と、すごく緊張します。
宮本:それって素晴らしいことだと思う。努力して優勝しても「泥を塗ったらいけない」という心意気や志があるのですよね。
多田:本場・青森では関西弁の歌なんて、という目を向けられることがあります。普段の演奏会でも「高校生で大丈夫?」という視線も。そのぶん、120%の責任感と準備をして演奏会に臨みます。逆にありがたい気づきがあるので、苦労とは思いませんけれど。
宮本:私もドイツにいたころに、何度か偏見の目を向けられたことがあります。だからこそ120%の気持ちで120%の演奏をしなきゃと考えた。そうして、演奏が始まって一音出したら、ころっと相手の態度が変わり、内心ほっとしました。音楽を通して、災害に遭った被災者が笑顔になったり、学校に行きづらい子どもが前を向いてくれたりした経験もあります。聴く人にも演奏者にも勇気をくれて、そういう偏見や差別なども全部とっぱらってしまう力があるんです。西洋楽器とか和楽器とかの壁なんて全然なくて、世界を一つにできるのが音楽のチカラだと思うのです。

●2026年の抱負と将来の夢
多田:チャンピオンになってからも他の場所での演奏会が多かったから、2026年の抱負は地元・守山での演奏会です。大学に進学しても滋賀を中心に演奏活動を続けるし、卒業したら必ず守山に戻ってきて、家を建てて、定住します。それはもう僕のこだわりです。将来は、いつか三味線人口が増えて「滋賀で盛り上がっているね」と思われるくらいにしたい。それから、この大ホールみたいな大きなホールで演奏できるエンターテイナーになりたい。
宮本:マリンバや打楽器のソロリサイタルのほかに、違う洋楽器や和楽器のような音楽家と一緒に演奏することが多いですが、舞踊とか狂言とか、違う芸術とのコラボレーションもしています。ジャンルの異なる芸術との出会いはすごく大切なことです。多田さんとも、この市民ホールで共演したいですね。一緒に守山から未来へ、守山から世界へ音楽の魅力を発信していきたいですね。

●多田智大さん
津軽三味線 演奏家
滋賀県立守山高等学校3年生
令和6年に、第12回津軽三味線津軽民謡全国大会〜日本の真ん中フェスティバルinびわ湖〜日本一部門・唄付抽選曲部門ダブル優勝。令和7年に、プロへの登竜門といわれる第43回津軽三味線世界大会個人A級チャンピオンなど、数々の大会で入賞・優勝。
現在は演奏活動をしながら、芸術大学進学を目指して勉強中。

●宮本妥子さん
マリンバ・打楽器 演奏家
ドイツ・フライブルク音楽大学を首席最優秀で修了。ドイツ国家演奏家資格首席取得。
数々の国際コンクールで入賞・優勝。滋賀県文化奨励賞、平和堂財団芸術奨励賞を受賞。帰国後、(一財)地域創造の公共ホール音楽活性化事業協力アーティストとして、全国各地でアウトリーチ活動を実施。
現在は滋賀県立石山高等学校音楽科、相愛大学音楽学部・同大学院非常勤講師、同志社女子大学嘱託講師。