- 発行日 :
- 自治体名 : 滋賀県守山市
- 広報紙名 : 広報もりやま 令和7年9月15日号
■美術鑑賞豆知識(2)
佐川美術館
学芸員:栗田 頌子(くりたしょうこ)
美術館を訪れたときに展示室が暗いと感じたこと、一度は経験がありませんか。これは、作品を光から保護するという理由があります。
実は、照明などの「光」は、作品の劣化を招く要因の一つです。光によるダメージを受けやすいか否かは作品の素材によって異なり、例えば当館の所蔵品だとブロンズ彫刻(金属)、茶わん(陶器)は光に強く、日本画(紙)は光に弱い性質を持っています。
そのため、美術館では展示品の特性に合わせて照明の強さ(照度)を調整しており、日本画など紙の劣化や絵の具の退色に配慮が必要な作品を展示する際は、展示室の地明かりやスポットライトの照度を下げます。また、照明は当て方を少し変えるだけで作品の印象が大きく左右されることから、学芸員は作品への光のダメージを最小限に抑えつつも、作品の美しさや魅力を最大限に引き出すために試行錯誤しながら照明作業を行っています。制約がある中で作り上げた展示空間について、お客様からうれしいご意見をもらえたときはとてもやりがいを感じます。
美術品は後世に長く残していくのはもちろんのこと、広く公開し、鑑賞されてこそ存在価値があるのです。美術館を訪れた際は作品だけでなく、照明にも注目してみてください。美術品と光の関係を心に留めていただくと、作品について理解が深まったり、演出効果のこだわりを知ることができたりして、美術鑑賞がより面白くなるかもしれません。
※開館情報は、佐川美術館ホームページでご確認いただくか、電話〔【電話】585-7800〕でお問い合わせください。