文化 甲賀の文化財

◆朝宮の湖朝組(こちょうぐみ)
甲賀のお茶は、信楽焼や甲賀のくすりと並ぶ、甲賀市の伝統的かつ主要な地場産業製品です。大きく土山の「土山茶」と、信楽の朝宮地域の「朝宮茶」があり、甲賀の特産品として知られています。今回は、このうち明治期の朝宮茶に関するエピソードを紹介します。
朝宮地域と茶の関係は、かなり古くから続くものであることはよく知られています。江戸(えど)時代には、御茶壺(おちゃつぼ)をはじめとする京都宇治(うじ)のお茶文化との関係もあってか、茶園やお茶の贈答記録も残るなど朝宮での生産活動は維持され続けました。
近代に入ると日本茶の海外輸出が盛んになりますが、朝宮でもそれに対応したと思われる同業者組合「湖朝組(こちょうぐみ)」が明治十年代に組織されています。組合員は全て朝宮の茶生産者で、「自製茶(じせいちゃ)」を湖朝組の名義で「輸出」することや、組外の茶商人に売らないこと、さらには粗悪品を生産しないことなどが規約として取り決められています。実は、明治前期は粗悪な輸出用日本茶が問題となっていた時期であり、朝宮地域の生産者が主体的に問題解決に取り組んでいたことが分かります。
同時期かと思われる記録には35種に上る銘柄が、壺入りのお茶として生産者とともに記載されており、家ごとのブランドが壺単位で販売されていたことも判明します。銘柄は「朝乃露」や「緑山」、「朝乃友」など朝宮にちなむものが多かったようです。そして、茶壺を収める箱に貼ったであろう「御茶入日記(おちゃいれにっき)」という紙が残されていることから、いずれも高級茶の類であったと推定されます。
今回紹介した「湖朝組」とその活動についてはほとんど知られていません。しかし、市の特産品の中でも、比較的早くに独自の生産体制を築こうとした例として貴重です。何か情報をお持ちの方は、下記までご連絡ください。

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