くらし 多賀町立博物館

◆虫たちの年越し-トンボの場合
新年あけましておめでとうございます。寒さも厳しくなるこの頃、虫たちを見かける機会は1年の中でも少ないかと思います。ですが、虫たちは目に見えないだけでそれぞれ独自の方法で冬を越しています。今回は年明けということで、縁起のよい虫として知られる「トンボ」の越冬についてお話しします。古来よりトンボは害虫を食べてくれる五穀豊穣の象徴であり、また前方向にしか飛ばない(実際には上下にも飛べホバリングもできます)ことから「勝虫(かちむし)」とも呼ばれ縁起物として親しまれてきました。
さて、そんなトンボですがほとんどの種は卵か幼虫(ヤゴ)のまま水中で越冬をします。ヤゴの生息する水環境は河川やため池、湖などさまざまです。その中で、冬場のヤゴ達は水が凍らないような場所でじっとしています。水温が低くなり獲物の活性も下がるため、ヤゴ自身も活動を控えエネルギーの消費を抑えて春を待つのです。
ところが、日本にはわずか3種類だけ、水中で越冬しないトンボが知られています。そのひとつが「オツネントンボ(越年蜻蛉)」というイトトンボの仲間です。名前のとおり、成虫の姿のまま冬を越す珍しい生態のトンボです。赤とんぼと呼ばれるアカネ属のトンボをはじめ、鮮やかな体色の種が多い中、オツネントンボは一見木の枝にも見える茶色く地味な色をしています。
オツネントンボは樹皮の裏側や積まれた薪の隙間、時には建物の中で越冬するようで、茶色い体色も枯れ枝や樹皮に似せたものなのかもしれません。
気温は水温よりも変化しやすく、0度を下回ることもあります。また、雪や雨などの悪天候が続きやすい地域では、飛ぶことも難しいと思われます。それでもオツネントンボが成虫で越冬する理由は、春の早い時期から活動できることにあると考えられています。イトトンボの仲間の多くは、ため池のような止水域に生育するヒシやジュンサイなどの浮葉植物や、水際の枯れ葉などに産卵をします。オツネントンボも同様の産卵様式であり、産卵時期をずらすことで他種との産卵場所の取り合いを避けている可能性があります。あるトンボの発生消長を調査した研究によると、3月中に見つかったトンボがオツネントンボ1種だけだったのが、4月になると6種類に増え、5月には15種類にまで増加したそうです。また、時間的にも体力的にもコストのかかる産卵を、天敵の少ない時期に安全に済ませられるというメリットもあります。
以上、トンボの越冬についてでした。オツネントンボに限らず、冬でも虫たちは意外と身近なところにいたりします。この時期であれば虫たちも越冬のためじっとしていることが多いため、見つけたらじっくり観察してみるのも良いのではないでしょうか。

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