くらし 〔特集1〕過去から学ぶ 水害への備え(1)

頻繁に起こる大雨や台風により、各地で水害が起こっており、宇治市でもこれまでに水害を何度か経験しました。
いつ・どこで起こるか分からない自然災害だからこそ、事前の備えが大切です。身を守るために必要な備えについて改めて考えてみませんか。

■過去に宇治市で起こった水害
▽昭和28年
当時、戦後最大雨量を記録
・8月14~15日に京都府南部地域を襲った集中豪雨により、隠元橋の流失や名木川堤防の決壊などの被害を引き起こし、被災家屋約5,700戸、死者300人以上の大規模な土砂災害が発生した。
・9月25日には台風13号により、宇治川・淀川・木津川・桂川などの大河川が決壊・氾濫し、各地で浸水被害を引き起こした。

▽平成24年
昭和28年を上回る降雨量
・8月14日に弥陀次郎川の堤防が約25m決壊した他、複数の中小河川で氾濫や溢水が同時多発的に発生。床上・床下合わせて2,075件の浸水被害を引き起こした。

▽平成25年
全国初「特別警報」が発令
・9月15~16日に台風18号により、当年8月に運用が開始された「特別警報」が国内で初めて発令され、宇治川の水位が急激に上昇し、氾濫の危険性が高まった。

近年、日本各地で台風の襲来や線状降水帯による豪雨災害が頻発しています。宇治市においても、平成24年に発生した京都南部地域豪雨災害は、痛ましい人的被害とともに、中小河川が氾濫し、土砂災害が発生するなど、市内各所に大きな爪痕を残しました。
宇治市では、これまで、治水対策など減災・防災対策に取り組むとともに今年度においても、備蓄の充実や避難所機能の向上、インフラの強靭化など、災害対応力の強化に取り組んでいます。また、「災害に強いまちづくり」には、行政だけではなく、一人ひとりが防災に対する意識を持ち、備えに取り組んでいただくとともに、地域での助け合いが不可欠です。激甚化する自然災害に備え、自助・共助・公助の連携をさらに強化し、宇治市としてしっかりと取り組みを進めてまいります。
宇治市長 松村 淳子(まつむら あつこ)

■水害の記録を知る
宇治市内で起こった水害の経験を活かし、地域での防災活動に積極的に取り組む槇島東地区防災対策会議の方々にお話を伺いました。

◇昭和28年水害の記憶
辻文明さん:私は幼稚園の頃で、家の前の道路が冠水し、玄関の敷居まで水がきたので、近くの堤防に避難しました。家の裏にあった槇島小学校のグラウンドが水没した様子を今でも覚えています。
西山さん:私も幼稚園の頃に経験し、強烈なインパクトでした。前日からの大雨で、ほぼ堤防の高さまで宇治川の水位が上昇していました。消防団が伝令に来てくれたおかげで、床上浸水に備えて親戚宅へ避難しました。明治生まれの祖父が経験則により、やるべきことを指示してくれたので助かりました。
辻昌美さん:私は高校2年生でした。南山城水害の被害を受けた地域への救援活動に行きましたが、学生の手に負えないほどでした。道路に川の水が流れこんで貯まり、湖になっていた様子が子ども心に強烈な印象で、「こんなことが宇治で起こったら…」と思った矢先に宇治でも水害が起こり、我が家は床下浸水しました。

◇地域の取り組み
昭和28年以来の大きな水害となった平成24年の京都府南部地域豪雨災害では、特に宇治川の東地域が大きな被害となりましたが、槇島をはじめとする西地域でも浸水などの被害が発生しました。また、翌年には、台風18号により国内で初めて大雨特別警報が発令され、宇治川においても洪水氾濫の危険性が高まり避難指示が出るなど、宇治市は何度も水害の恐ろしさを経験しています。
槇島地域は、旧巨椋池、平地、宇治川近辺という自然災害が発生しやすい条件が揃っており、危機意識を持っている中で、連合町内会の会長が防災に関する講演を聞きにいく機会がありました。そこで、地域コミュニティが強いところほど災害時に生存者が多かったという話を聞いて「地域で何かしないと!」と思い、槇島東地区防災対策会議を結成。いち早く安否確認旗を作成し、避難時の対応を決めました。
他にも、毎年10月に防災訓練を開催したり、市の避難所では距離が遠い家庭もあるため、保育園や福祉施設にお願いし、各家庭から近い避難先を設定したり、京都府の協力を得て災害時に必要な防災行動を時系列に整理した計画「タイムライン」を作成し、水量によって避難段階を決めたりしました。

◇取り組みを通して
結成当初から槇島で活動している団体に防災対策会議への参加を呼びかけていることもあってか、防災訓練の参加率が高いことは手ごたえを感じています。
一方で、組織の高齢化の進行、若い人の参加が難しいことが課題だと感じています。しかし、平時から「相互扶助」の集まりになることが重要だと思うので、地域の行事を通して子育て世帯や地元中学校の参加も促し、地域のつながりを強化しています。

◇水害の備えで大切なこと
テレビのdボタンやスマートフォンで雨量をチェックするなど能動的な防災活動、防災・減災の経験者が記録を残し、伝承していくこと等が大切だと思います。さらに、地域コミュニティ=自分の命を守るための組織という意識や、自分も周囲の人の命も一緒に守ろうという発想を持つことも必要だと感じています。