文化 《特集》時を刻む京田辺の名宝~市文化財指定制度50周年記念~(3)

■専門家に聞いてみた!
本像に造詣が深い専門家の田中さんに話を伺いました。

京都大学大学院文学研究科准教授 市文化財保護審議会委員 田中健一さん(42)
現在発売中の「京田辺市史」の彫刻に関するページを執筆しました。

◆Q.十一面の数え方は?
A.2つの説があります。
十一面観音の「十一面」には2つの説があります。観音様の顔を含めて十一面とする説と、観音様の顔は含めずに顔の上にある頭上面だけで十一面とする説があります。前者の場合は頭上面の数え方に諸説あります。どちらの説も唐の時代からいわれていました。

◆専門家から見て「すごい」と思えるポイントは?
◇出来映えが非常に優れている!
実際の人間を理想化した写実的な美が表現されており、髪の毛や衣のひだに至るまで、人体の再現度が非常に高いです。顔は卵形で弾力が感じられ、見る人に少年のような印象を与えます。

◇保存状態が破格に良い!
指先や頭上面など後に補われた部分がみられますが、ほぼ制作当時のままの姿を今に残しています。

◇歴史的に見ても貴重!
頭上面に牙が生えている十一面観音像としては、かなり早期の作例です。8世紀初頭の中国ではこのような作例はほとんどなく、東アジア全体を見渡しても貴重な事例と考えられます。

◆Q.高貴な像がなぜこの地に?
A.災厄から都を守るためと考えられます。
京田辺市は都である平城京からも近く、かつては山陰道と山陽道が分岐する山本駅があり交通の要衝でした。疫病などの災厄が都に入らないようにするため、この地に当時の最高水準の十一面観音像が置かれたと考えられます。

■文人も魅了!多くの著作に登場
日本の著名な作家や俳人も本像に魅了され、その著作の中で次のように綴っています。
「天平のすぐれた特徴をそなえている」(出典「十一面観音巡礼」著者…白洲正子)
「黒々として、どこかに硬い感じのある十一面観音は、汚れない童子のように見えた」(出典「日本古寺巡礼」著者…井上靖)
「大和聖林寺にある立派な立像とくらべてよい美しいものだが、世間にあまり知られてない」(出典「大佛(おさらぎ)次郎エッセイ・コレクション1 歴史を紀行する」著者…大佛次郎)
「千年経て御仏います冬紅葉」(出典「句集 殉教」著者…水原秋櫻子(しゅうおうし))