くらし 《特集》特産を支える 新規就農者の挑戦と直売所の魅力(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 京都府京田辺市
- 広報紙名 : ほっと京たなべ 令和7年6月号(No.949)
初夏は田植えなど多くの農産物の栽培が盛んになる季節です。
今号では、市特産の生産者や種類のほか、新鮮野菜を購入できる直売所を紹介します。
■市特産「山城たけのこ」を生産 父から息子につなぐ
「山城たけのこ」の産地である松井地域で、脱サラして専業農家に転身した大野貴則さん(36)と、「師匠」である父親の繁治さん(70)が協力しながら、タケノコを収穫する姿を取材しました。
地中に埋まっているタケノコの探し方は、足裏の感触や地割れを目視します。発見すると、「ほり」と呼ばれる持ち手が付いた金属製の細長い棒状の道具を使って、地下茎とタケノコの境に突き刺し切断して、てこの原理で掘りあげます(表紙)。タケノコは隔年で豊作の「表年」と不作の「裏年」があり、今年の松井地域は「裏年」に当たるため、収量は少なめです。
◆箱詰めでは見栄えも意識
収穫したタケノコは作業場に持ち帰り、規格ごとに分別した後、保湿性が高い袋を被せた箱に、見栄えも意識しながら一本一本丁寧に詰めていきます。その後、トラックで市場に向けて出荷されます。
・タケノコの目印となる地割れ
・かごいっぱいに収穫されたタケノコ。この日午前中だけで130本収穫されました。
・タケノコの根元を包丁でカットして形を整えます。
・箱詰め作業も親子で協力。重さを計量しながら、決められた重量になるまで、個体を何度も入れ替えることも。
◆〔Interview〕生産者の声 新規就農者の挑戦 大野貴則さん(36)
就農して5年目
脱サラして専業農家に転身
特産のナス・タケノコなど約10種類を生産
『結婚してからあちこちに小旅行するようになり、ファッションに気を遣うようになりました。今は、気に入った服を探すショッピングが趣味です。』
~大野さんのナス栽培法は京田辺発祥の「興戸方式」~
うね間に作業用通路を設けることで省力化を図る「興戸方式」は、昭和61年に興戸地区で生み出されました。手入れがしやすく品質向上につながるメリットがあります。
~ドローンで米の直まきに挑戦~
◇広告代理店から農業の世界へ
実家は兼業の米農家で、祖父亡き後は父がメインで農業に従事しています。私は、広告代理店で営業を担当していましたが、将来、自分が後を継いだ時に、サラリーマンを続けながら農業をすることの難しさを認識し、専業農家への転身を決意しました。収益が出る野菜作りを学ぶため、アルバイトをしながら週末に農業スクールで1年半学んだり、市と府、JA京都やましろが開く田辺なす農家養成塾に1年通ったりして、基本的な知識や技術を身に付けました。また、ユーチューブなどを見ながら独学で学んだ野菜も数多くあります。
たくさんの種類の野菜を栽培し、直売所に出荷する中で、「売れる野菜」「売れ残る野菜」「利益率の高い野菜」などを見極め、徐々に種類を絞っていきました。現在は、8千平方メートルの畑で、ナス・ブロッコリー・オクラ・枝豆など約10種類を一人で栽培しており、タケノコは、父に教わりながら一緒に収穫・出荷をしています。
◇ドローンを使った米の直まきに挑戦
今年からは新たに2千平方メートルの田で米の栽培を計画しており、省力化のためにドローンを使った直まきにチャレンジする予定です。挑戦と失敗を繰り返しながら、少しずつ成功に近づけるやり方が自分の性格に合っていると思います。
◇地域の人との交流が魅力
実家は米農家なので、同業者とのつながりはありますが、野菜の生産者とのつながりがなく、孤独を感じることがあります。就農したばかりで不安な時、近隣でナス栽培をしている80歳の方に小まめに声を掛けていただき、とても心強く感じました。今では息子さんとも仲良くさせてもらい、農業を通じて地域のいろんな方々と交流できる点も農業の魅力だと感じています。
◇たなフェスに3回連続で出店
私はイベントの企画や準備が好きなので、たなフェスには初回から欠かさず出店し、おにぎりや野菜を販売しています。おにぎりはスパムやサケ入りなど数種類を用意したところ、飛ぶように売れてうれしかったです。また、出荷先の直売所で自分の商品を陳列していた時に、お客さんが手に取ってくれた瞬間は、何とも言えない感動がありました。
◇こだわりは土作り
土づくりにはこだわっています。タケノコ畑で間引いた竹は粉砕機でパウダー状にして、畑にまいています。保温性や殺菌効果、排水性があり、作物の成長に効果を感じています。また、米ぬかを入れることもあります。
◇人と比較しない
収益・栽培面積・収量など、他の生産者と比較せず、自分の目標に向かって地道に努力することを心掛けています。
◇目標は米栽培の技術を高めること
野菜作りは手間が掛かるので非常に大変です。長く農業を続けていくためには、負担の少ない米の生産を主軸とすることが重要だと考えますので、米栽培の技術を高めていきたいです。