くらし 区制100周年記念 みなとの100年、みんなの物語

~これまでもこれからもこの地域(まち)と~

港区には、地域ごとに紡がれてきたまちの物語があります。区制100周年を機に、その過去と今を語り合い、これからの未来をともに思い描くインタビュー企画をお届けします。

■波除地域
港区の北東部に位置する波除地域。工場から住宅への転換が進んで人口が増加し、波除小学校は区内で最も多い児童数となっています。地域名は、江戸時代に安治川の土砂を積み上げて造られた人工の山「波除山」からきているそうです。今回は波除地域について、民生委員の原田さん、主任児童委員の水野さんにお話を伺いました。

◇港区で最初に誕生した子育てサロン「紙ふうせん」
港区内でいちばん初めに子育てサロンを立ち上げたのが、波除地域。平成12年(2000年)に「紙ふうせん」の名称で始まりました。当初は波除小学校の空き教室を会場にしており、原田さんは「在校生がのぞきに来てくれたり、クリスマスには校長先生がサンタクロースに扮してプレゼントを配ったり、学校との交流も盛んでした」と当時を振り返ります。その後、波除小学校の建て替えなどに伴い、会場を波除会館に移動。コロナ禍を経て、現在は予約制で実施しています。「今は共働きの家庭が多く、地域での子育てのつながりはごく短い時期に限られます。話せる相手や知り合いがいない方が子育てサロンに気軽に参加してもらえるよう、保健師さんや地域の方々の力も借りながら、口コミでも広げていけたらと考えています」と水野さん。子育てサロンが、親子ともに地域に安心して関われるきっかけになればと、水野さんたちは活動を続けています。

◇学校と連携し、子どもたちの安全と成長を見守る
お2人はサロン運営のほかにも、地域の子どもたちを支える活動にも積極的に関わっています。毎週水曜日の下校時に実施している見守り活動では、旗を持って横断歩道などに立ち、下校する子どもたちの安全を守ります。小さかった一年生がだんだん大きくなり、卒業する頃には自分たちを追い越すほど背が高くなっている―そんな子どもたちの成長を間近で感じられるのも、この活動の喜びのひとつ。月2回は、小学校での読み聞かせボランティアも実施しており、学校と連携しながら、子どもたちと定期的に触れ合う機会を設けています。子育てサロンに来ていた子が小学生になって見守りで再会することもあり、「紙ふうせんの人や!」と言われることもあるそうです。「小さい頃のほんの短い間なのに、覚えていてくれたことがうれしくて」と水野さんは笑顔に。原田さんも、「長く活動していると、子どもたちの成長を見守ることが日常の一部になります」と語ります。

◇「困ったときに思い出してもらえる存在でありたい」
原田さんが地域活動に関わるようになったのは、小学校のPTA活動がきっかけ。先輩に声をかけられ、「地域の役に立てるなら」と主任児童委員を引き受けました。一方、水野さんは、民生委員だった母の退任を機に主任児童委員を勧められたのが始まり。「原田さんと一緒なら心強いと思って」と就任を決意しました。
原田さんは民生委員として、行政や警察の方と連携しながら、子育て世帯や独居高齢者などの見守りも行っています。責任の重い役割ですが「私がやらなきゃ!と気負うのではなく、まわりのお力を借りながら、何か少しでもお役に立てればという気持ちでやらせてもらっています」と自然体で活動を続けています。
最近は外国にルーツを持つ子どもたちも多く、いかにコミュニケーションをとるかが課題に。それでも原田さんは「どこにルーツがある方でも、皆さんが安心して暮らせる街になればいいなと思います」と力強く語ります。水野さんは、「民生委員や児童委員が身近な相談相手として地域にいて、どんな小さなことでも気軽に相談できるということを、ぜひ皆さんに知っていただけたらうれしいです」と語ります。
地域の誰もが安心して暮らせる環境づくりへ。お2人は地域に寄り添い、身近な支えになれるようにと活動を続けています。