文化 港区今昔物語

■「浮かぶ大病院」巡回病院船・慈愛丸の栄光と最期
昭和2年(1927)、大阪市港区南福崎町の占部(うらべ)造船所で巡回病院船・慈愛丸が竣工しました。当時は水上生活者が非常に多く、市内の河川を病院船で巡回することで、より多くの大阪市民の福利厚生に貢献できると大阪毎日新聞慈善団が考案したものです。内科、外科、眼科、小児科、耳鼻咽喉科の医療室にレントゲンまで兼ね備え、当時最先端の「浮かぶ大病院」でした。木津川河畔や道頓堀、中之島、長堀川などを巡回し、年間約1万人以上が利用し、昭和9年(1934)の室戸台風でも3500名以上の傷病者を手当して活躍しています。市民に愛された病院船でしたが戦争の激化で軍事優先の時勢に抗えず、昭和14年(1939)に処分されました。

監修:陸奥賢さん 観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験者